全 情 報

ID番号 07385
事件名 労働契約上の地位確認等請求事件
いわゆる事件名 北産機工事件
争点
事案概要  営業部員として採用され、八月から営業担当に予定されていた労働者が、早退して帰宅途上に交通事故を起こし、脳挫傷等の傷害を受け、業務外の傷病を理由に休職し、休職期間六か月の経過後、会社が復職できる状態ではないとして復職命令を出すことなく退職させたことに対して、右の者が右退職措置を違法であるとして、労働契約上の地位確認及びその間の賃金を請求したケースで、右退職措置を違法であるとして、労働契約上の地位確認及びその間の賃金請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 傷病休職
休職 / 休職の終了・満了
裁判年月日 1999年9月21日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 1295 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例769号20頁
審級関係
評釈論文 山川隆一・ジュリスト1183号182~184頁2000年8月1日/大賀浩一・労働法律旬報1468号6~7頁1999年11月25日/大石玄・労働法律旬報1488号56~62頁2000年9月25日
判決理由 〔休職-傷病休職〕
 被告は、その就業規則において、従業員が業務外の傷病で欠勤が三か月以上に及んだとき、休職させることができる(就業規則三三条一号)、その休職期間は六か月を限度とする(同三三条一号、三四条一項一号)、従業員が復職を命じられないで休職期間が満了したときは、退職とする(同二八条二号)、と定めている。
 右休職制度は、被告の従業員が業務外の傷病を理由に三か月以上欠勤する場合に、六か月を限度として休職期間とし、この期間中の従業員の労働契約関係を維持しながら、労務への従事を免除するものであり、業務外の傷病により労務提供できない従業員に対して六か月間にわたり退職を猶予してその間傷病の回復を待つことによって、労働者を退職から保護する制度である、と解される。したがって、六か月の休職期間の満了までに従業員の傷病が回復し従前の職務に復職することが可能となった場合には、当該従業員を休職期間の満了をもって退職させることは無効である、と解するのが相当である。そして、復職が可能か否かは、休職期間の満了時の当該従業員の客観的な傷病の回復状況をもって判断すべきである(客観的には復職可能な程度に傷病が回復していたにもかかわらず、会社が資料が不十分のために復職が不可能と判断して当該従業員を退職扱いにした場合には、当該従業員の退職の要件を欠いており、退職が無効になる、と解すべきである)。
〔休職-休職の終了・満了〕
 2 これを本件についてみるに、原告の六か月の休職期間が満了した平成九年一月一〇日の時点において、原告には、左手にわずかな震えがあり、右足にはしびれが残り、軽度の複視の症状があり、月一、二回の通院が必要な状況であったが、日常の生活には問題がなく、事務能力、計算能力も回復し、車の運転もできるようになり、通常の仕事は可能な状況に回復していたのであるから、原告は、従前の見積書の作成や積算関係の仕事を担当し、営業として外回りの仕事を担当することが可能な状況になっていた、少なくとも、直ちに一〇〇パーセントの稼働ができなくとも、職務に従事しながら、二、三か月程度の期間を見ることによって完全に復職することが可能であった(被告において、右期間程度の猶予を認める余裕がなかった、あるいは、原告の月一、二回の通院を認めることによって業務遂行に支障が生じる、との事情は認められないから、信義則上、休職期間の満了後は一切の通院は認められない、とすることはできない)、と推認することができるから、休職期間の満了を理由に原告を退職させる要件が具備していた、と認めることはできず、原告を休職期間満了として退職とした取扱いは無効である、と解するべきである。