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ID番号 07425
事件名 不当労働行為救済命令一部取消請求控訴事件
いわゆる事件名 大阪地労委・日本貨物鉄道事件
争点
事案概要  貨物鉄道事業等を業とする会社Xが、就業規則に「職務上の事件について証人として官公署に召喚された場合」で、「会社が必要と認めた」場合は有給休暇を付与する旨を規定し、会社側申請の証人として指導助役等が証言する場合には、出張命令を発するか、その時間を有給扱いとしていたにもかかわらず、労働委員会の審問に組合側の証人として出頭した国鉄労働組合の組合員Aについては欠勤扱いし、右労働時間につき賃金カットしたところ、国鉄労働組合が救済を申し立てたし大阪地方労働委員会Yによって、右賃金カットは不当労働行為であるとして、Aが証人として出頭した時間の賃金相当額の支払を命じられたことから、右命令の取消しを請求したケースの控訴審で、一審と同様に、労働委員会の証人として呼び出された場合、それが申立人であるか否かを問わず、就業規則の「職務上の事件について証人として官公署に召喚された場合」に該当し、この場合において、Xが、自己申請証人については就業規則の「会社が必要と認めた」ものとして有給扱いする一方で、Aについては救済申立人であること故に無給扱いとすることは、労働組合法七条四号に違反する不当労働行為として許されないとして、本件命令を支持し、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法7条
労働組合法7条4号
体系項目 労基法総則(刑事) / 公民権の行使 / 公の職務
裁判年月日 1999年4月8日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (行コ) 66 
裁判結果 棄却(上告後取下)
出典 労働判例769号72頁
審級関係 一審/大阪地/平10.10.26/平成9年(行ウ)95号
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-公民権の行使-公の職務〕
 (一) 労働委員会が事件の審理に必要と認めて出頭を求めるものである以上、その証人の出頭及び証言は、すべて労基法七条の公の職務執行行為に当たる。
 (二) 労働委員会における不当労働行為救済申立事件の申立人が証人となった場合と、その余の証人とを区別して取り扱うことには合理的理由がない。
 (三) 控訴人就業規則七八条一項五号によれば、Aが本件出頭に要した時間は有給になる場合に該当する。
 (四)控訴人が使用者申請により証人となった従業員を有給として取り扱いながら、同じく証人となった申立人であるAを無給として取り扱ったのは、労組法七条四号所定の不当労働行為の救済の申立をしたことを理由として不利益な取扱をすることにあたり、不当労働行為に該当する。〔中略〕
〔労基法総則-公民権の行使-公の職務〕
 労働委員会に対する救済申立は労働者の個人的権利、利益のためのみのものではなく、労働組合の団結権、団体行動権ひいては正常な集団的労使関係秩序維持に資する公益的なものでもある。それ故、この申立が控訴人主張のように労働組合活動の側面を有する場合があるとしても、法は、それが使用者の労務に当たるか否か、組合活動の側面があるか否かを問わず、おしなべて申立を理由とする不利益取扱いを禁止しているのである(労組法七条四号)。したがって、労働者が不当労働行為の救済の申立をしたことをもって、それが申立権の濫用に当たるなど特段の事情がない限り、不利益な取扱をしてはならないのであって、その不利益取扱自体が不当労働行為に当たる。
 (四) 労働委員会は不当労働行為の成否の判断のため証人に出頭を求め質問することができる(労組法二七条)。前示救済制度の目的に照らすと証人が申立人であると、それ以外の者であるとを問わず、真実義務を負い出頭、証言するものであってその間に径庭はない。それは、いずれも前示集団的労働関係秩序の回復、確保という公的目的に資するための公的機関である労働委員会から命ぜられた労働基準法七条の公の職務行為にも当る。(ママ)〔中略〕
〔労基法総則-公民権の行使-公の職務〕
 労働委員会の証人として呼び出された場合は、それが申立人であるか否かを問わず、控訴人の就業規則七八条一項の「職務上の事件について証人として官公署に召還された場合」に該当する。この場合、控訴人が自己申請証人のみに業務命令(出張命令)を出したり、同条項五号の「会社が認めた」ものとして「有給の休暇」を付与したりして、これを有給扱いとし、他方、控訴人(ママ)が救済申立人であることの故に有給休暇を付与せず無給扱いすることは、前示のとおり不当労働行為として許されない(労組法七条四号)。