全 情 報

ID番号 07452
事件名 療養補償給付金等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 ビデオ販売会社事件
争点
事案概要  ビデオ販売等を業とする会社の店舗で稼動していた労働者A(以前から非外傷性の脳出血管疾患発症の基礎となり得る疾患を有していたが、右基礎疾患が自然的経過により血管が破綻する寸前まで至っているわけではなかった)の妻Xが、Aが営業会議出席中に、出席者から突然横領嫌疑をかけられて口論した直後に脳出血を発症し、病院に入院して治療を受けていたが、呼吸不全により約二週間後に死亡したことから、労働基準監督署長に対し、右脳出血は業務上の事由によるものとして療養補償給付等の支給請求をしたところ、不支給処分(審査請求、再審査請求とも棄却)とされたため、右処分は違法であるとしてその取消しを請求したケースで、脳出血発症に至るまでの経緯、右会議の経緯、脳出血発症後の経緯、医学的知見等を検討した結果、Aの脳出血発症及び死亡は、会議での強い緊張、興奮、驚がく等をもたらす異常事態に遭遇した直後のことであり、業務上の事由により生じたものと認めることができるとして、請求が認容された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働基準法施行規則別表1の2第9号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1999年10月26日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (行ウ) 38 
裁判結果 認容(控訴)
出典 タイムズ1042号148頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 Aは、その基礎疾患が、未だその自然的経過によって脳血管疾患を発症する寸前まで進行していたものとみることはできない状況で、業務として行われた本件会議でBから突然横領嫌疑をかけられ口論するという、強い緊張、興奮、驚がく等をもたらす異常事態に遭遇し、その直後に本件疾病を発症し、これが原因となって死亡したというべきである。そして、本件疾病及び死亡の原因となった非外傷性の脳血管疾患について、他に確たる発症因子のあったことはうかがえない。そうすると、同人の有していた基礎疾患が右異常事態によりその自然の経過を超えて急激に悪化して発症したものとみるのが相当であり、その間に相当因果関係を認めることができるというべきである。