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ID番号 07457
事件名 配置転換無効確認等請求事件、解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 公営社事件
争点
事案概要  葬儀の請負を業とする会社Yに入社後、営業部課長を経て、開発営業部次長であったXが、Yの営業部と開発営業部の営業部としての統合に伴い、営業部次長に任ぜられていたが、右組織改正に伴う開発職手当や借上げ車両の廃止、新営業部長の就任に不満をもち、会社の営業方針に対して意見を申し入れる等をしていたため、右Xの言動は業務に支障を与えると判断したYから、営業活動を外れて当直に従事するよう業務命令を受けたことから、右業務に従事していたところ、その後、管理部次長として勤務する旨の業務命令を拒否したことを理由に、自宅待機命令及び一週間の出勤停止処分を受けたが、それ以降も右業務命令を拒否し続けたため、就業規則の規定に基づき解雇の意思表示がなされたことから、(1)労働契約上の地位、本件配転命令及び出勤停止処分の無効の確認、(2)賞与減額分及び賃金の支払、(3)一連の行為が不法行為であるとして慰謝料の支払を請求したケースで、(1)については、XとYの間の雇用契約締結時にYの配転命令権を認めることに合意していたものと解するのが相当としたうえで、本件配転命令は業務上の必要性を欠いており、権利の濫用に当たり無効であり、配転命令拒否を理由とする本件懲戒解雇処分及び本件解雇は、懲戒事由を欠き、権利の濫用であり無効として、請求が認容され、(2)については、(1)を前提として計算された未払賃金額分についてのみ請求が認容、(3)については、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
労働基準法89条1項3号
労働基準法89条1項9号
労働基準法11条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1999年11月5日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 17721 
平成10年 (ワ) 28304 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例779号52頁/労経速報1743号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 配置転換は、労働者の勤務場所又は職種を将来にわたって変更する人事異動の一つであるところ、使用者が労働者に対して配置転換を命じることができるのは、雇用契約その他の両当事者間の合意として、使用者の配置転換命令権が認められている場合と解すべきである。
 本件において、原告は、被告から新規顧客の開拓を期待されて被告に入社し、実際にもその業務に従事していた(〈証拠略〉、前記一2(1))が、原告の職務を新規顧客の開拓に限定する趣旨の雇用契約書が作成された形跡はない一方、被告の就業規則一〇条一項には、会社は業務の都合により社員に対して職場若しくは職務の変更、転勤その他人事上の異動を命ずることがあると規定され(〈証拠略〉)、原告も平成九年一一月二五日付け業務命令に対し、特に異議をとどめずに応じていることからすると、原告と被告は、雇用契約締結の際、被告の配置転換命令権を認めることに合意していたものと解するのが相当である。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 使用者が包括的な配置転換命令権を有する場合、業務上の必要等に応じて自由な裁量により労働者の職務を決定することができるが、それは無制限に許されるものではなく、右裁量権の行使が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したものと認められる場合は、例外的に権利の濫用に当たり無効となるものと解するべきである。そして、当該配置転換命令が権利の濫用に当たるかどうかは、業務上の必要性の程度と当該配置転換によって労働者が被る不利益の程度とを比較衝量(ママ)して判断しなければならない。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 右によれば、本件配転命令は、そもそも業務上の必要性を欠いており、被告に裁量権を付与した目的を逸脱した配転命令権の行使と言わざるを得ず、したがって、権利の濫用に当たり無効である。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 本件懲戒処分は、原告が本件配転命令に応じなかったことを理由として行われているところ、本件配転命令は前記のとおり無効である。したがって、本件配転命令に従わないことを理由とする本件懲戒処分は、懲戒事由を欠き、懲戒権の濫用であることが明らかであるから、無効である。
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 本件解雇も、原告が本件配転命令に応じなかったことを理由として行われているところ、本件配転命令は無効であるから、本件懲戒処分と同様、権利の濫用に当たり無効である。
〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 (一) 原告は、被告の原告に対する不当な査定によって、賞与が減額され、また、昇給も通常より低額しか行われなかった旨主張する。
 しかし、被告においては、給与規程二条、三条が、給与及び賞与は会社の業績と社員に割り当てられる職務の質並びに社員の年齢・経験・勤務成績及び勤務条件等を総合的勘案して決定すると規定しており(〈証拠略〉)、従前支給していた給与を減額する場合と異なり、賞与及び昇給については、被告の査定が著しく不当で合理性を欠くような場合は、そのような賞与や昇給の決定が権利の濫用として許されないことがあるとしても、そうでなければ、原則として被告の裁量に属する事柄であるというべきである。そして、本件においては、被告の原告に対する査定が著しく不当で合理性を欠くことを認めるに足りる証拠はない。