全 情 報

ID番号 07480
事件名 労働者地位確認等請求事件
いわゆる事件名 協和運輸事件
争点
事案概要  運送会社Y所有のタンクローリー車に乗務してバラセメント輸送の業務に従事していたXらが、タンクローリー車のリース料、燃料費、高速道路代金、自動車保険料、修理代等を負担し、雇用保険及び社会保険に加入せず、労災保険の適用対象者とされていなかったことから、その待遇に不満を持ち、労組分会を結成して賃金改定やリース料返還等を要求したのに対し、Yが雇用関係不存在確認の訴えを提起したが(後に取り下げ)、その後の団交の結果、和解書とともに、雇用契約のないことを確認し、報酬を最低保障付き(月六〇万円)出来高払制とし、自動車保険料や修理代はY負担とする内容の業務委託契約書が取り交わされ、その後、期間を一年とする右業務委託契約は二回更新されたが、三回目は更新されず、契約を解消し延長しない旨が通告されたことから、Yとの契約関係は労働契約であり、契約の拒絶は実質的に解雇であり、また解雇権濫用に当たるとして、労働契約上の地位確認及び未払賃金の支払を請求したケースで、雇用契約でないことの文書確認の存在、業務遂行の際に指揮命令や時間的・空間的拘束を受けていなかったこと等を理由に、両者の法律関係は請負又は委任もしくはそれらの混合契約であり、Xらは労働基準法上の労働者ではないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 傭車運転手
裁判年月日 1999年12月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (ワ) 2180 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例781号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-傭車運転手〕
 原告らは被告所有のタンクローリー車を使用して、被告の指示するバラセメント輸送業務に従事しており、その仕事も継続的であって、雇用に類似する面がないとはいえないし、報酬は出来高払制とはいえ、最低保障があり、欠勤した場合には、欠勤一日につき、被告の従業員たる運転手と同様の割合である二五分の一に相当する金額を最低保障額から控除されることとなっていることも、労働契約性を認めるに有利な事情の一つということができる。
 しかしながら、第一に、原告らは、和解書及び業務委託契約書を取り交わすことによって、被告との関係が雇用契約でないことを確認している。
 そして、賃金を出来高払とすることは労働契約の本質に反するものではないが、被告には、他に定額賃金で雇用されている運転手がいるにもかかわらず、敢えて原告らのみ報酬を出来高払制とされていること、その報酬額も従業員である運転手より高額であること(最高額を取得している運転手の賃金は賞与をいれても、原告らの最低保障額にすら及ばない)、業務遂行に必要な費用である燃料費等も原告らの負担とされていること、報酬支払は原告らからの請求書に基いて(ママ)、しかも、源泉徴収もなく消費税を加算した金額が支払われてきていること、退職金支給の対象とされていないこと、社会保険には加入していないか、加入しているとしても保険料は全額加入者が負担していること、雇用保険には原告らすべてが加入していないこと、健康診断の受診も任意とされていた(以上は、原告ら自身認識し、容認していたものと認められる)、そのほか、原告らが認識し、容認していたかは明らかではないが、労災保険の適用対象外と取り扱われていたことなど、原告らに対しては雇用関係にある従業員とは明らかに異なる処遇がなされている。〔中略〕
〔労基法の基本原則-労働者-傭車運転手〕
 原告らは、就業規則の始、終業時刻等の制限を受けず、時間外労働等の割増賃金の支払もない(出来高払制賃金であっても、使用者は割増賃金支払義務を免れるものではないが、原告らがこれまで割増賃金を問題にしたとは認められず、原告らはその不支給を容認していたものと解される)のであって、原告らに求められていたのは仕事の結果であり、原告らが、指示された仕事を遂行する限り、それ以外に業務の遂行方法について指揮命令を受けていたとか、時間的、場所的な拘束があったとは認められない。〔中略〕
〔労基法の基本原則-労働者-傭車運転手〕
 第三に、原告らは、タンクローリー車の運転という業務の性質からして原告らの業務には代替性がなかったとも主張するが、この点は、タンクローリー車という特殊車両の運転技術を有する限り代替性はあるともいえるのであって相対的なものであり、当然に原告らの一身専属的な労務の提供が求められていたと解さなければならないというものではない。右のとおり、原告らに求められていたのは仕事の結果であり、業務遂行において被告の指揮命令に服していたとは認められないことからすると、原告らが自らの責任のもとに、他車を用い、運転技術を有する他の者を使用するなどして被告から指示された仕事をしたとしても、これをもって債務の本旨に従った履行でないとすることは困難というべきである。
 以上によれば、原告らと被告との法律関係は請負または委任、もしくはそれらの混合契約というべきであり、原告らは労働基準法上の労働者には該当しない。