全 情 報

ID番号 07506
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 恒昭会事件
争点
事案概要  病院等を経営する法人Yとの間で期間を一年、報酬は年俸制(平成元年以降経営悪化のため減額時期もあったが約三千万円の年俸額)、労務提供を内容とする契約を一年ごとに更新し、右法人経営の病院で勤務していた常勤内科医X(当時、右病院の院長であり、右法人の理事に就任していた)が、約二〇年間にわたり繰り返されてきた契約を更新しない旨の意思表示がなされたため、本件契約は本来又は転化より期間の定めのない雇用契約であり、右更新拒絶は解雇権の濫用により無効であるとして、雇用契約上の地位確認、賃金及び慰謝料の支払等を請求したケースで、Xは理事かつ院長という立場で人事権の行使など経営者の立場にあった等を理由に、理事就任後のXY間の契約は雇用契約ということはできないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法14条
労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 病院長
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2000年2月4日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 9763 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1728号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-病院長〕
 原告は理事であり、かつ、院長という立場にあって、現実に、経営に参画し、人事権を行使するなど経営者の立場にあった者で、被告との本件契約について、その理事就任後は、これを雇用契約ということはできないものと考える。原告の報酬明細は、給与という名称を使い、勤務医におけると同様に、医師給与体系に関する条項の号俸に基づき記載されているが、右記載は便宜的なものというべきであり、これをもって原告に対する報酬を賃金ということはできない。また、右報酬には医師としての労務提供に対する対価を含むとはいえるものの、院長としての業務に医師としても業務を含むから、これをもって雇用契約の根拠となし得るものではない。
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 本件契約は一年を期限として契約したものであることは明らかであり、これを形式的なものであるとは認められない。本件契約が平成九年まで更新されてきたことは明らかであるが、本件契約が雇用契約でないことは前述のとおりであり、右更新を繰り返したという事実によって、期間の定めのない契約に転化したとはいえない。したがって、本件契約は、平成一〇年三月三一日をもって終了したものである。