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ID番号 07519
事件名 賃金支払請求上告事件
いわゆる事件名 三菱重工業長崎造船所(二次訴訟)事件
争点
事案概要  Y社長崎造船所の従業員でY長崎造船労働組合の組合員であるXら一九名が、右造船所では完全週休二日制の実施に当たり、従前の職場の入口又は控所付近に設置されたタイムレコーダーによる勤怠把握を廃止し、就業規則を変更して始業・終業時刻及び始業・終業の勤怠把握基準が新たに定められたことにより、更衣所等において作業に当たり義務づけられている作業服のほか所定の保護具等を装着して準備体操場まで移動する行為は所定労働時間外に行うことを余儀なくされていたところ、右組合が始業時刻以後更衣所等で右更衣を行う闘争をし、その結果、作業場到達時間が遅れたとして右時間を不就業(遅刻)として賃金カットされたことから、作業服等の装着時間及び準備体操場まで移動する時間は労働基準法上の労働時間に該当するとして、未払賃金の支払を請求したケースの上告審で、一審と同様に、作業服等の装着時間及び準備体操場まで移動する時間は使用者の指揮命令下にある時間で労働基準法上の時間に該当するとして、賃金請求を認容した原審の判断は正当であるとして、Yの上告が棄却された事例。
参照法条 労働基準法32条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 着替え、保護具・保護帽の着脱
裁判年月日 2000年3月9日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (オ) 1266 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例778号14頁/労経速報1728号3頁
審級関係 控訴審/06444/福岡高/平 7. 3.15/昭和63年(ネ)16号
評釈論文 小畑史子・労働基準52巻10号28~32頁2000年10月/土田道夫・労働判例786号6~13頁2000年10月1日
判決理由 〔労働時間-労働時間の概念-着替え、保護具・保護帽の着脱〕
 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。〔中略〕
〔労働時間-労働時間の概念-着替え、保護具・保護帽の着脱〕
 (四) 被上告人らは、昭和六〇年六月一日から同月三〇日までの間、就業規則所定の始業時刻に作業服及び保護具等の装着を開始して準備体操場に赴いた、というのであり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。
 三 右事実関係によれば、被上告人らは、上告人から、実作業に当たり、作業服及び保護具等を装着するよう義務付けられ、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたというのであるから、右二(四)の行為は、上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができる。そして、各被上告人が右二(四)の行為に要した時間がいずれも労働基準法上の労働時間に該当するとした原審の判断は、正当として是認することができる。