全 情 報

ID番号 07525
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 開智学園事件
争点
事案概要  中学校、高校を設置する学校法人との間で、期間を一年とする雇用契約を毎年更新しながら、高校の非常勤講師(一回更新)及び常勤講師(六回更新)として勤務してきた(職務内容は専任教諭とほとんど違いはなかった)労働者Xが、七回目に更新した契約期間満了約二か月前に、高校の生徒数の急激な減少という事態から、次年度は更新しない旨が通知され雇止めされたことから、本件雇止めは解雇権の濫用に当たり無効であるとして、雇用契約上の地位の確認及び賃金の支払を請求したケースで、Xが期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性があったとはいえるが、解雇権の濫用には当たらないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法14条
労働基準法21条
労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2000年3月17日
裁判所名 浦和地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 709 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1756号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 原告の職務の種類、内容、勤務形態、採用に際しての雇用契約の期間等についての被告側の説明、契約更新時の新契約締結の形式的手続の有無、契約更新の回数、同様の地位にある他の被雇用者の継続雇用の有無を検討し、その結果、期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在し、あるいは、そのように認め得るほどの事情はないとしても、少なくとも被雇用者が期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性が認められる場合には、本件雇止めに解雇の法理が適用ないし類推適用されるというべきである(最判昭和四九年七月二二日民集二八巻五号九二七頁、最判昭和六一年一二月四日裁判集民事一四九号二〇九頁参照)。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 右説示したところに加えて、前提となる事実2(一)記載のとおり、原告と被告との間では、七回にわたって雇用契約が更新されていること等を総合考慮すると、原告と被告との間における雇用契約は、その期間の定めを無視することはできないが、少なくとも原告において期間満了後の雇用の継続を期待することには合理性があったと認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
 5 したがって、第一の争点に関する被告の反論は、これを採用することができず、本件雇止めには、原告の主張するとおり、解雇の法理が適用ないし類推適用されるべきものといわなければならない。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 本件においては、以上説示したところを総合考慮し、本件雇止めが解雇権の濫用に当たるか否かを検討することになるが、被告高校における常勤講師は、非常勤講師とともに、生徒数及び学級数の増減に対応するために、一年という期間を定めて雇用されたものであり、本件において、原告が期間満了後の雇用の継続を期待することには合理性が認められるが、期間の定めがなく雇用されている専任教諭とは、被告との間の契約関係の存続の要否・程度に自ずから差異があるといわざるを得ないから、原告に対する本件雇止めが解雇権の濫用に当たるか否かを判断するに際しても、被告に相当程度の裁量が認められると解すべきものであって、それまで雇用していた常勤講師、非常勤講師を雇止めにする必要がないのに、原告に対してのみ恣意的に雇用契約を終了させようとしたなど、その裁量の範囲を逸脱したと認められるような事情のない限り、本件雇止めを解雇権の濫用ということはできない。
 5 そして、右の見地から本件をみると、被告高校においては、平成六年度に大量入学した生徒が卒業した平成九年度における生徒数の急激な減少という事態を迎え、それまで雇用していた常勤講師、非常勤講師の一部の者と雇用契約を終了させる必要があったところ、その雇止めの対象となった原告についても、その他の者についても、それまでの教務に特段の問題があったようには窺われないが、雇止めの対象から外れて雇用契約が更新された常勤講師、非常勤講師についても、そのような事情は窺われないので、そのいずれかを雇止めの対象とするほかなかったところ、本件全証拠をもってしても、被告において、原告に対してのみそれまで一年毎に継続されてきた雇用契約を恣意的に終了させるために本件雇止めに至ったなど、本件雇止めが原告に対する解雇権の濫用に当たるという事情は認めることができない。