全 情 報

ID番号 07534
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 カンタス航空事件
争点
事案概要  オーストラリアに本店を置く外国航空会社Yに、(1)シドニーでの教育訓練終了日から数えて五年を超さない期間を契約期間として日本ベース客室乗務員として雇用され、期間満了により失効するはずであったところ、組合と会社の交渉の結果、同年に雇用契約が更新され、翌年以降については「会社の利益を妨げるようなことをすること」という要件に該当しない限り三年間毎年契約更新をする旨の合意がなされていたX1ら六名、また(2)オーストラリアベースの正社員であったが日本ベースに移るに当たりYを退社して改めて日本ベースの契約社員として一年の雇用契約を締結し、翌年以降について「勤務成績が良好でないことをすること」という要件に該当しない限り三年間については毎年契約更新する旨の合意がなされていたX7ら六名が、期間満了によりそれぞれ雇用契約が終了したことを理由に雇止めされたことから、右雇止めは解雇の法理の適用又は類推適用により、無効であるとして、労働契約上の地位確認及び未払賃金の支払を請求したケースで、X1らとYの合意においては、いずれも契約期間満了以降について、契約更新が当然に予定されていたとはいえず、いずれも期間の定めのある契約であったとして解雇の法理の適用を否定し、また雇用関係の継続を期待することに合理性があるともいえず、解雇法理を類推適用することはできないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法14条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2000年3月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 13608 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例784号18頁
審級関係
評釈論文 松田保彦・ジュリスト1203号145~147頁2001年6月15日/中山代志子・経営法曹134号16~27頁2002年7月
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 以上によれば、被告は昭和六二年九月に原告X1、原告X2、原告X3、原告X4、原告X5及び原告X6との間でシドニーでの教育訓練終了日から数えて五年を超さない期間を契約期間として同原告らをそれぞれ日本ベース客室乗務員として雇用する契約を締結したが、この契約は平成四年一〇、一一月には契約期間の満了により失効するはずであったところ、被告が同年四月ころから訴外組合との交渉を重ねた結果、被告と原告X1、原告X2、原告X3、原告X4、原告X5及び原告X6との間で締結した前記雇用契約を更新することになり、被告は原告X1、原告X2、原告X3、原告X4、原告X5及び原告X6との間で平成四年には定期健康診断及び勤務状態の結果に照らし「会社の利益を妨げるようなことをすること」及び「医学的な支障があること」という二つの要件にあてはまらない限り同原告らの雇用契約を契約期間一年として更新するが、平成五年以降は「会社の利益を妨げるようなことをすること」という要件にあてはまらない限り平成八年まで毎年更新を繰り返すことを合意したのであるが、その合意において平成九年以降の更新が当然に予定されていたということはできないのであり、そうすると、被告が原告X1、原告X2、原告X3、原告X4、原告X5及び原告X6との間で締結した雇用契約は期間の定めのある契約であるというべきである。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 以上によれば、被告が原告らとの間で締結した雇用契約は期間の定めのある契約であるというべきであるから、その雇用契約の終了に当たって当然に解雇に関する法理が適用されるということはできない。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 期間の定めのある雇用契約において被用者が契約期間の満了後も雇用関係の継続を期待することにある程度の合理性が認められる場合には、そのような契約当事者間における信義則を媒介として、契約期間の満了後の新契約の締結拒否(雇止め)について解雇に関する法理を類推すべきであると解される(最高裁昭和四九年七月二二日第一小法廷判決(民集二八巻五号九二七頁)及び最高裁昭和六一年一二月四日第一小法廷判決(判例時報一二二一号一三四頁)は、右の観点から雇止めについて解雇の法理を類推適用したものと解される。)。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 被告は原告X7、原告X8、原告X9、原告X10、原告X11及び原告X12との間で平成四年一一月又は平成五年三月に契約期間を一年として雇用契約を締結するが、平成五年又は平成六年以降は「勤務成績が良好でないこと」という要件にあてはまらない限り平成八年又は平成九年まで毎年更新を繰り返すことを合意したのであるが、その合意において平成九年又は平成一〇年以降の更新が当然に予定されていたということはできないのである
 が、右のような雇用契約の内容に照らせば、仮に原告らの主張に係る契約継続を前提とする諸事情(前記第二の三1(一)(2))をすべて勘案したとしても、原告らが被告との間で締結した雇用契約の契約期間の満了日である平成九年一一月二〇日又は平成一〇年四月一八日が経過した(前記第二の二7)後も被告との間の雇用関係の継続を期待することに合理性があるということはできない。
 したがって、本件雇止めに当たって解雇の法理を類推適用することはできない。