全 情 報

ID番号 07575
事件名 賃金等請求上告事件
いわゆる事件名 片山組(差戻後上告審)事件
争点
事案概要  土木建築の設計、施工等を業とする会社Yの本社工事部に配置された建設工事現場における現場監督業務に従事し、労働組合の執行委員長であるXが、現場監督業務に従事すべき旨の業務命令に対し、バセドウ病の罹患により現場作業に従事できないと申し入れたものの、結局本件工事現場の勤務に就いていたところ、自宅治療命令が発せられ、復帰までの四か月間を欠勤扱いにされて賃金が支給されず、冬期一時金も減額されたため、右自宅治療命令は不当労働行為に該当し無効であり、また故なく労務提供を拒否するものであるから、本件不就労期間中の報酬請求権を失うものではないとして、賃金等の支払を請求したケースの差戻後上告審で、差戻し前一審と同様に、Xは本件不就労期間には就労可能な事務作業にかかる労務提供を申し出ていたと認定したうえで、Xの能力、経験、地位、Yの規模、業種、Yにおける労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らすと、本件自宅命令当時、Yには、Xのような多年にわたり現場監督業務に従事していた者にも遂行可能な事務作業業務が少なからず存在し、Xを事務作業業務等に配置する現実的可能性があったと認められ、またXのなした労務の提供は債務の本旨に従ったものというべきであり、Yが本件自宅治療命令を発してXが提供した労務の受領を拒否したため、Xは不就労期間中に労務に服することができなかったのであるから、賃金等請求権を喪失しない(民法五三六条二項)として、冬期一時金のうち成績査定による減額分がXに支払われるべきであるとした原審(差戻審)の判断を相当として、Yの受理申立てに対して不受理の決定がなされ、Yの上告が棄却された事例。
参照法条 民法415条
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 債務の本旨にしたがった労務の提供
裁判年月日 2000年6月27日
裁判所名 最高三小
裁判形式 決定
事件番号 平成11年 (受) 879 
平成11年 (オ) 1065 
裁判結果 棄却(不受理)
出典 労働判例784号14頁
審級関係 差戻控訴審/07329/東京高/平11. 4.27/平成10年(ネ)1425号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-債務の本旨に従った労務の提供〕
〔賃金-賃金請求権の発生-債務の本旨にしたがった労務の提供〕
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法三一二条一項又は二項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、理由の不備をいうが、その実質は事実誤認を主張するものであって、明らかに右各項に規定する事由に該当しない。