全 情 報

ID番号 07587
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 東京海上火災保険(普通解雇)事件
争点
事案概要  損害保険会社Yに総合職従業員として採用されコンピューターシステムの開発・保守に関する業務等に従事していたXが、通勤途上の負傷や私傷病等を理由に四度の長期欠勤(四か月・五か月・一年・六か月)をはじめ、約五年五か月のうちの約二年四か月欠勤し、最後の長期欠勤前二年間の出社日数のうち約四割が遅刻であったこと、長期欠勤明けの勤務にも消極的であり、また上司の指導にもかかわらず、出勤しても離席が多く、出勤時の勤務実績も劣悪で、担当業務を指示どおりに遂行することができず、他の従業員が肩代わりをしたり、ときには後始末のために少なからぬ時間を割かなければならなかったことから、右欠勤等が就業規則及び労働協約の普通解雇事由(労働能率が甚だしく低く、会社の事務能率上支障があると認められたとき)に該当するものとして解雇の意思表示がなされたことから、右解雇は無効であるとして、労働契約上の地位の確認及び賃金の支払を請求したケースで、Xは労働能率が甚だしく低く、Yの事務能率上支障を生じさせているから、就業規則及び労働協約に定める普通解雇事由に該当するとし、Yが本件解雇をせざるを得ないと判断したことは客観的に合理的な理由があり解雇権の濫用には当たらないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 2000年7月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 19747 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例797号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 前記1及び2の各認定事実によれば、原告は、平成4年11月以降、四度の長期欠勤を含め傷病欠勤が非常に多く、その総日数は本件解雇までの約5年5か月のうちの約2年4か月に及び、長期欠勤明けの出勤にも消極的な姿勢を示したこと、出勤しても遅刻が非常に多く、離席も多かったこと、出勤時の勤務実績も劣悪で、担当業務を指示どおりに遂行することができず、他の従業員が肩代わりをしたり、ときには後始末のために少なからぬ時間を割かなければならず、被告の業務に支障を与えたことが認められる。
 これらによれば、原告は、労働能率が甚だしく低く、被告の事務能率上支障を生じさせていたというべきである。〔中略〕
〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 原告は、普通解雇事由を定めた労働協約27条1項3号及び就業規則50条1項3号の「労働能率が甚だしく低く、会社の事務能率上支障があると認められたとき」に該当すると認められる。〔中略〕
〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 原告の上司らが指導を続けてきたことは前認定のとおりであり、それにもかかわらず、原告の勤務実績、勤務態度は変わらなかったものであるし、本件解雇時まで継続していた本件欠勤〔10〕では、出勤して労務提供を提供する意欲が原告に見られなかったのであるから、被告が原告を解雇せざるを得ないと判断したことには客観的に合理的な理由があるのであって、本件解雇が解雇権の濫用に当たるとはいえない。