全 情 報

ID番号 07640
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 京都銀行事件
争点
事案概要  銀行Yの元従業員Xが、Yの就業規則では、始業時刻が午前八時三五分、終業時刻は週初、週末及び月末の各営業日が午後五時三五分、それ以外の日が午後五時であり、休憩時間は午前一一時から午後二時までの間において一時間業務に支障のないように交替して取るものとされていたが、従業員のなかには始業時刻前に金庫開扉作業等を行っている者がおり、また休憩時間についても顧客からの電話があったときの便宜のため外出には届出と承認が必要であったこと等から、〔1〕始業時刻前の準備作業、朝礼、融得会議、昼の休憩時間、終業後の残業等は労働時間に該当するとして、時間外勤務手当の未払分とこれと同額の付加金の支払を請求し、また〔2〕Yの幹部から嫌がらせと昇進差別を受けて退職を余儀なくされたとして不法行為に基づく慰謝料の支払を請求したケースで、〔1〕については従業員の時間外勤務が自主申告に任されているなど、Yの労働時間管理や時間外勤務の取扱いに不明朗な点がある点は否定できないとしながらも、Xの主張のとおりの時間外勤務がなされたと認めるには証拠が不十分であるとして請求が棄却され、〔2〕についても、Y及びその幹部らがXに対して不法行為に及んだと認めることができないとして請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法37条
民法709条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1999年11月25日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 861 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例811号15頁
審級関係 控訴審/07775/大阪高/平13. 6.28/平成11年(ネ)4141号
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 右(二)で検討したとおりであるから、従業員の時間外勤務が自主申告に任されているなど、被告の労働時間の管理や時間外勤務の取扱に不明朗な点があることは否定できないとしても、原告が別紙〔2〕ないし〔18〕記載のとおり時間外勤務をしたと認めるには証拠が不十分であるといわざるを得ず、被告が原告に対して時間外勤務手当の支払義務を負うということはできない。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 右に認定した事実によると、被告は、原則として午前8時以前の店舗への立入りを禁止し、各従業員が効率的な仕事をして早帰りを実行できるように勧めるなど、できるだけ時間外勤務をさせないよう努めていたものの、その一方で、右1(三)のとおり、被告の労働時間の管理や時間外勤務の取扱に不明朗な点があったことも否定できないのであるが、いずれにせよ、原告が労働条件の改善を申し入れたことが原因で、上司から非難されたり昇進を見送られたりしたとは認め難く、退職を余儀なくされたともいえないので、結局、被告及びその幹部らが原告に対する不法行為に及んだと認めることはできない。