全 情 報

ID番号 07645
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ブイアイエフ事件
争点
事案概要  メディア映像の政策等を主たる目的とする株式会社Y1でプロデューサーとして勤務していたXが、帰宅途中に飲酒運転で交通事故を起こし約三カ月の治療を要したため、取引先A社の職員に対し事故前に仕事の打ち合わせを行っていた旨の工作を依頼して、本件事故を通勤災害として労災給付の支給申請したところ(代表取締役Y2はこの事実を知らなかったが、代表取締役Y3及び取締役Y4はXから報告を受けて黙認していた)、後日A社から苦情がよせられたにもかかわらず、Xは通勤災害申請の取り下げを拒否したため、Y1から出勤停止命令が出され、さらに取引先とのトラブルや経費の不正使用等の事実が判明したこと等を理由に、懲戒解雇されたことから、右懲戒解雇はY2が、Y3及びY4と共謀のうえ、懲戒解雇事由がないことを知りながら、Xが分会長として組合活動をしていることを理由として不利益な取扱いをしたものであり、違法な解雇であると主張して、主位的にYらに対し、不法行為に基づく損害賠償の支払を、予備的にY3及びY4に対し、取締役の第三者に対する責任の履行として賃金相当額、慰謝料及び逸失利益等の支払を請求したケースで、Xに懲戒解雇事由となる事実の存在は認められないが、Yが懲戒解雇事由とした事由のなかにはY2が懲戒解雇事由に当たらないことを知らないで懲戒解雇事由としたものもあるから、Yが故意に違法な解雇をしたとの証明があったとはいえず、また不当労働行為に意思に基づいて解雇したとも認められないなどとして、請求が棄却された事例。
参照法条 民法709条
労働基準法89条本文
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
就業規則(民事) / 就業規則の届出
裁判年月日 2000年3月3日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 25908 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例799号74頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則の届出〕
 右認定によれば、被告会社は、従業員就業規則の原案を作成して従業員に見せて同意と実施を求め、従業員もこれを受け入れて一部実施に踏み切り、本件分会も従業員就業規則をそのまま承認する方針であったのであるから、被告会社は、右に述べた事情から労働組合の意見を記した書面を添付できず、労働基準監督署長に届け出ないままではあったが、始めから従業員就業規則を実施する意思で、その内容を従業員に周知していたものということができ、従業員就業規則は平成4年9月ころには就業規則としての効力を有するに至っていたものと解するのが相当である。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 被告会社代表取締役である被告Y2は、代表取締役である被告Y3及び取締役である被告Y4と共謀のうえ、懲戒解雇事由がないことを知りながら、原告が組合活動をしていることを決定的動機として、本件懲戒解雇をした旨主張する。
 この主張は不法行為による損害賠償請求の根拠となる事実の主張であり、被告Y2が懲戒解雇事由がないことを知りながら故意に解雇をしたことを要とするものである。原告はこの要件事実に加えて原告が組合活動をしていることを決定的動機としたことを主張するが、この事実は被告Y2が懲戒解雇事由がないことを知りながら故意に解雇をしたことと選択的に併存するものであり、いずれかの事実が証明されれば足りるものと解するのが相当である。そこで、以下においては、まず、懲戒解雇事由の有無、懲戒解雇事由が認められないとすれば被告Y2がそのことを知りながら解雇したか否か、被告Y2と被告Y3及び被告Y4との間に共謀が認められるかについて検討し、これらが認められない場合に、被告会社が原告が組合活動をしていることを決定的動機として解雇したか否かについて検討することとする。〔中略〕
 四で述べたとおり、原告に懲戒解雇事由となるべき事実の存在は認められないが、被告会社が懲戒解雇事由とした事由の中には被告Y2が懲戒解雇事由に当たらないことを知らないで懲戒解雇事由としたものがあるから、被告Y2が故意に違法な解雇をしたことの証明があったとはいえない。〔中略〕
 1 被告会社が懲戒解雇事由とした事由の中には被告Y3も被告Y4も懲戒解雇事由に当たらないことを知らないで懲戒解雇事由としたものがあるから、被告らには結局不法行為の故意がなく、また、被告会社の代表者である被告Y2と被告Y3及び被告Y4が共謀のうえ故意に違法な解雇をしたことについては、その証明があったものということができない。