全 情 報

ID番号 07679
事件名 療養給付等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 和歌山労基署長(宮井新聞舗)事件
争点
事案概要  新聞販売業を営む株式会社で支店長として新聞配達業務等に従事していたX(発症当時五一歳・高血圧症等の基礎疾患あり)が、自らの夕刊配達業務の準備後、遅れてきた配達員に配達先を指示するために待機していたところ高血圧性脳出血を発症して倒れ、七ヵ月後には症状が固定し日常生活動作について介助を必要とする後遺症が残ったため、和歌山労基署長Yに対し右疾病を業務上の事由によるものとして労災保険法に基づく療養補償給付及び障害補償給付の請求をしたところ、労災保険給付の不支給決定がなされたことから、右処分の取消しを請求したケースで、Xの業務は稼動時間が早朝から夜間に及び、睡眠時間が分割されざるを得ないことなどを考慮しても、格別過重なものではなく、脳出血を発症するに至った原因として相当有力なものであると認めることは困難であり、むしろXの高血圧症等の基礎疾患が本件疾病の発症の有力な原因であると推認されることから、業務起因性を肯定することはできないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8第1項1号
労働者災害補償保険法12条の8第1項3号
労働基準法施行規則別表1の2第9号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
裁判年月日 2000年11月21日
裁判所名 和歌山地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (行ウ) 9 
裁判結果 請求棄却(控訴)
出典 タイムズ1056号196頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
 労災保険法に基づく療養補償給付及び障害補償給付がなされるためには、労働者が業務上傷病を患うことが必要であり、それは、その傷病が業務に起因すると認められること(業務起因性)、すなわち、傷病と業務との間に相当因果関係が存在することである。そして、高血圧症等の基礎疾病を有していた原告が、業務遂行中に高血圧性脳出血(本件疾病)を発症した本件において、業務起因性が認められるためには、原告の当該業務が脳出血を発症した有力な原因と認められる程度に過重なものであったと判断されることを要するというべきである。〔中略〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 原告の前記業務の性質上、稼働時間が早朝から夜間に及び、睡眠時間が分割されざるを得ないことなどを考慮しても、原告の行っていた業務が格別過重であり、脳出血を発症するに至った原因として相当有力なものであるとまで認めることは困難である〔中略〕
 前記認定事実によれば、原告は、昭和六二年以後、血圧が安定していた時期もあったものの、むしろ高い数値を示していた時の方が多かったことが認められ、平成二年における薬剤の投与状況をみても、高血圧症への対処が充分であったとはいえないから、高血圧症により通院を開始した後の昭和六三年に脳動脈硬化症に罹患したことをも併せると、本件疾病の危険因子は悪化の方向をたどっていったものと推認され、これに加えて、前記認定のとおり、A、B両医師が、基礎疾患と脳出血との関連について、いつ脳内出血が起こっても不思議ではないと思われるとの判断を示していることをも併せ考慮すれば、原告の高血圧症等の基礎疾患が本件疾病(高血圧性脳出血)の発症の有力な原因であると推認される。