全 情 報

ID番号 07801
事件名 就業規則無効確認等、就業規則効力確認請求控訴事件
いわゆる事件名 ハクスイテック事件
争点
事案概要  会社の研究所に勤務する労働者Xが、〔1〕年功序列制から職能制度を中心とした給与規定の変更(年功部分八〇%とする旧規定から職能部分八〇%とする新規定へ変更)及び〔2〕退職金規定の変更(算定ベースを勤続年数とする制度から職能制度をベースとしたポイント加算制度への変更)が、合理性のない不利益変更で無効であるとして、変更前の給与規定及び退職金規定が現に効力を有することの確認を請求したケースの控訴審で、原審と同様、〔1〕については、本件賃金制度の導入には赤字経営のため収支改善すべき措置としてその必要性が認められ、また国際的競争力が要求される時代においては年功型賃金体系は合理性を失いつつあり、成果主義に基づく賃金制度を導入することが求められており、Yには高度の必要性があったということができるなどとして請求が棄却、〔2〕についても、退職金債権は、退職後初めて具体的に発生するものであり、退職前には具体的な債権として存在するものではないとして、Xの控訴がすべて棄却され、原審の判断が維持された事例。
参照法条 労働基準法89条1項2号
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
裁判年月日 2001年8月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ネ) 1330 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例816号23頁
審級関係 一審/07517/大阪地/平12. 2.28/平成10年(ワ)271号
評釈論文 ・労政時報3514号76~77頁2001年11月9日
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕
 次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕
 近時我が国の企業についても、国際的な競争力が要求される時代となっており、一般的に、労働生産性と直接結びつかない形の年功型賃金体系は合理性を失いつつあり、労働生産性を重視し、能力・成果主義に基づく賃金制度を導入することが求められていたといえる。そして、被控訴人においては、営業部門のほか、控訴人の所属する研究部門においてもインセンティブ(成果還元)の制度を導入したが、これを支えるためにも、能力・成果主義に基づく賃金制度を導入する必要があったもので、これらのことからすると、被控訴人には、賃金制度改定の高度の必要性があったということができる。
 なお、この点について、控訴人は、近時、年功型賃金体系の良さを見直す論調も有力であり、年功型賃金体系が時代遅れではない旨主張し、この主張に沿う論文等を証拠として提出する。しかし、それらの論文等を検討しても、大部分は、能力・成果主義に基づく賃金制度の問題点を指摘するものであって、必ずしも、旧来の年功型賃金体系そのものを積極的に評価するものは多くはない。また、一方で、被控訴人が提出する論文、新聞記事等によれば、能力・成果主義に基づく賃金制度の導入を強く主張する論調も有力であり、また、近時この制度を導入する企業も多く認められるところである。そして、前記認定の事実によれば、本件給与規定改定がもっぱら中高年を狙打(ママ)ちにしたものともいえない。前記控訴人の主張は、被控訴人の賃金制度改定の必要性に関する前記認定を左右するものではない。