全 情 報

ID番号 07816
事件名 損害賠償請求各上告事件
いわゆる事件名 全税関横浜支部事件
争点
事案概要  〔1〕税関職員であり、全国税関労働組合横浜支部X1(国家公務員法上の登録された職員団体)の組合員であるX2らが、横浜税関長からX1の組合員であること又は思想、信条のみを理由に昇任、昇格及び昇給において差別的取扱を受けたとして、国に対し、昭和三九年から昭和四九年までの間に昇任において差別されなかった場合に得られたであろう賃金と現に得た賃金との差額及び差別的取扱により被った精神的苦痛に対する慰謝料等の損害賠償を、〔2〕組合X1が国に対し、組合員が右のような差別的取扱いを受けたこと及び横浜税関当局によるX1からの脱退勧奨、分裂の画策、加入妨害、組合員に対する不利益取扱、第二組合への活動援助と新入職員に対する右第二組合加入のための便宜供与などの違法な支配介入により団結権を侵害され無形の損害を被ったとして、慰謝料等の損害賠償を請求したケースの上告審(Y及びX1、X2のうち一六名が上告)で、一審はいずれの請求も棄却していたが、最高裁は、〔1〕については本件期間中の処遇において、組合員と非組合員との間に昇任、昇格、昇給等給与に格差があるが、その処遇が勤務成績、能力、適性等に照らし著しく不相当であって裁量権の範囲を逸脱しているともいえないとしてX2らの控訴を棄却し、〔2〕については、横浜税関長がX1組合に対し違法な支配介入を行い、団結権を違法に侵害したものであるとして、Yに対し慰謝料二〇〇万円(弁護士費用五〇万円)の支払を命じ一審の判断を変更した原審の判断を相当として、Xら及びYの各上告を棄却した事例。
参照法条 国家賠償法1条
労働基準法3条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 2001年10月25日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (オ) 853 
平成11年 (オ) 854 
裁判結果 棄却(確定)
出典 時報1770号153頁/タイムズ1079号167頁/裁判所時報1302号5頁/労働判例814号34頁/第一法規A
審級関係 控訴審/07633/東京高/平11. 2.24/平成5年(ネ)824号
評釈論文 伊藤幹郎・労働法律旬報1521号4~9頁2002年2月10日/山川隆一・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕268~269頁/中窪裕也・月刊法学教室260号134~135頁2002年5月/福岡右武・平成14年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1125〕300~301頁
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕
 横浜税関における職制上司による原告組合員に対する脱退勧誘行為を当局が容認、期待ないし助長したことが原告組合に対する支配介入に当たる旨の原審の認定判断は、一部に措辞必ずしも適切でないところがあるとしても、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、その過程に所論の違法はない。
 また、被告は、東京税関文書や関税局文書から本件係争期間中における横浜税関当局の全税関に対する差別意思等を推認したことを論難する。確かに、関税局文書の記載は、原審のように理解することも十分に可能ではあるものの、正当な理由に基づいて生じた格差があまりにも大きくなったのでこれを縮小するための方策につき協議したものであると理解することもできないではない上、上席官昇任について全税関組合員にのみ適用される異なる基準があったという事実は、上席官が昭和52年に新設された官職であることがうかがわれることに照らすと、それ以前にまでさかのぼるものではないことや、東京税関文書の記載中には東京税関固有のこととみられる事実が含まれていることにかんがみれば、これらの資料のみから横浜税関当局が本件係争期間において全税関を差別する意思を有していたことを直ちに推認することは、ちゅうちょせざるを得ないところである。しかしながら、原判決は、これらに加えて、Aメモにより本件係争期間に属する昭和47年6月8日以前の時期に横浜税関当局により原告組合員に対し原告組合からの脱退の勧誘がされていた事実を始めとする前記2(8)掲記の横浜税関に固有の諸事実を認定した上で、それらをも総合して上記のように横浜税関においては当局の原告組合に対する一般的差別意思が認められるとしているのであって、これらの事実をも併せ考慮するならば、その推認過程に経験則に違反する違法があるとはいえず、これを是認することができるというべきである。Aメモに係る論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎない。