全 情 報

ID番号 07851
事件名 遺族補償年金不支給処分取消等請求控訴事件
いわゆる事件名 名古屋労働基準監督署長事件
争点
事案概要  都市銀行で融資関係の業務に従事していたBが、顧客であるAとの電話中に急性心不全により死亡したことにつき、Bの妻であるXが、死亡を業務に起因するものであるとしてY(労働基準監督署長)に対して労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付等の請求をしたところ、Yが、Bの死亡は業務に起因するものでないとして不支給の処分をしたため、Xがその取消しを求めたケースの控訴審で、原審と同様に、Bの死亡は業務に起因するものでないとしてXの控訴を棄却した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働基準法75条
労働基準法79条
労働基準法施行規則別表1の2第9号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 2000年9月28日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (行コ) 23 
裁判結果 棄却(上告、上告受理申立て)
出典 訟務月報47巻11号3362頁
審級関係 一審/名古屋地/平10. 6.22/平成5年(行ウ)26号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 前記検討のとおり、Aからの電話を含む亡Bの本件疾病発症当時及びそれ以前の業務は、そもそも亡Bの当時の健康状態からみて、客観的には、特段過重な業務であったとは認められない。他方、前記のとおり、亡Bには、負担が大きいとは認められないストレス源等に誘発されて、不整脈発作などによる突然死が起こるリスクが健常人よりも高いと認められるのであるから、この点からみれば、本件疾病の発症は、亡Bの右突然死のリスクが、業務過重性を基礎付ける程度にも至っていないAとの電話をきっかけに現実化した結果であるという可能性も排斥できない。そうすれば、亡Bの業務と本件疾病発症との間に条件関係は認定し得るにしても、過重な業務に内在する本件基礎疾患憎悪の危険性が、右突然死のリスクを差し置いて現実化したため本件疾病発症に至ったとまで認定することはできない。」〔中略〕
 業務の過重性は、被災労働者のみならず同種、同僚労働者も含めて、相対的、客観的に判断されねばならぬところ、本件における亡Bの本件疾病発症時の業務が同人の健康状態に照らし客観的には過重なものとは認められないことは前記認定のとおりである。そして、被災者の健康状態に照らし客観的には過重とは言えない程度の業務によるストレスが、何らかの事情により被災者にとっては主観的に急激で強い心理的ストレスとなったために疾病を発症させる事態に至ったとしても、そのような発症をもって直ちに過重な業務に内在する疾病発症の危険性が現実化した結果であると認めることはできない。そうすれば、C医師の右供述は採用することができない。
 したがって、亡Bの業務と死亡との間の相当因果関係はこれを認めることができない。」