全 情 報

ID番号 07875
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 テンプル教育サポート・サービス事件
争点
事案概要  米国大学の日本分校の英語教員として、平成二年三月一六日に雇用されたXが、期間を一年とする雇用契約を更新していたところ、平成九年三月二四日付で、経営者であるYから、同年四月三〇日以降は雇用契約の更新をしないとの通知(雇止)を受けたのに対して、雇止めを行ったのは解雇であり、解雇に関する法理が類推適用されるべきである等として、賃金等の請求を行ったが、雇用契約は一年以上の継続が期待されていなかった等として、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法14条
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2001年10月1日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (ワ) 7849 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1793号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 被告が原告に対し、本件契約の更新を約束した、あるいは原告が更新を期待するのもやむを得ない言動をとった事実を認めるに足りる証拠はない。かえって、被告は、まず、A大学の雇用慣行に従い、原告との間で、更新の保証のないことが契約書に明記された雇用契約を締結し、また、その約五か月後である平成八年一一月、原告に対し、集中英語コースの常勤教員の人数を二〇名から一五名に削減しなければならないため一部の教員との間で雇用契約を更新できない可能性があること、更新の対象となる教員を選定するための審査を行うことを通知し、平成九年二月、この審査を行った。原告は、更新を保証しないことは内規(就業規則)に違反すると主張するが、集中英語コースの教員が用いていた職員ハンドブック中の「講師に別段の通知がない限り、雇用契約は毎年自動的に更新される」との記載(書証略)を被告が正式な規則として承認した事実を認めるに足りる証拠はなく、その他に、被告と教員との間の雇用契約が毎年自動的に更新される旨の被告の内規や就業規則が存在することを認めるに足りる証拠はない。原告は、本件契約はそれまでの経営主体との間で確立された雇用慣行に違反すると主張するが、従前とは別の経営主体である被告が新たに教員との間で雇用契約を締結するに当たり、どのような条件を提示するかは、被告の裁量に属するから、原告の主張は採用することができない。
 (2)以上によれば、本件契約は、実質的に、当事者双方とも、期間は定められているが、格別の意思表示がなければ当然に更新されるべき雇用契約を締結する意思であったと認めることはできないから、期間の定めのない雇用契約に転化した、またはこれと実質的に異ならない状態で存在していたということはできない。
 また、本件契約は、一年間以上の継続が当然には期待されておらず、実際にも一度も更新されたことはなかったから、本件雇止めの効力を判断するに当たり、解雇に関する法理を類推適用すべきであると解することはできない。
 したがって、本件契約は、平成九年四月三〇日の期間の経過をもって終了したと認めるのが相当である。原告の被告に対する給料等及び帰国手当の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。