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ID番号 07876
事件名 労働契約上の地位確認等請求事件(505号)、団体交渉を求める地位確認請求事件(925号)
いわゆる事件名 本四海峡バス事件
争点
事案概要  本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法に基づいて設立されたY社と補助参加人組合(A組合)との間にはユニオン・ショップ協定が締結されており、Y社のバス運転士らはA組合の組合員であったが、平成一一年七月、運転士ら全員がA組合に脱退届を提出したうえ、同日付で全港湾労働組合に加入手続きをとり、X1がX2の支部長、X3及びX4がその役員となったことにつき、Y社がA組合からX1、X3、X4の除名決定の通知と解雇要請を受けて、ユニオン・ショップ協定に基づき、Y社がX1、X3、X4を解雇したことに対して、X1、X3、X4が解雇無効及び賃金の支払を求め(甲事件)、また、X5及びX2(全港湾労働組合の地方本部と支部)が、団体交渉を求める地位にあることの確認や損害賠償等を請求した(乙事件)ケースで、解雇が権利濫用により無効とされ、被解雇者につき地位確認及び賃金の支払が認められ、また、X6及びX7(共に組合支部)の団体交渉を求める地位にあることの確認や損害賠償請求の一部が認められた事例。
参照法条 労働基準法89条3号
労働組合法7条1号但書
民法90条
民法1条3号
民法536条2項
体系項目 解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
裁判年月日 2001年10月1日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 505 
平成12年 (ワ) 925 
裁判結果 一部認容、一部棄却、一部却下(控訴)
出典 労働判例820号41頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-ユニオンショップ協定と解雇〕
 ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、上記の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法28条参照)。そうすると、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような労働者に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない(最高裁昭和60年(オ)第386号平成元年12月14日第一小法廷判決・民集43巻12号2051頁、最高裁昭和62年(オ)第515号平成元年12月21日第一小法廷判決・裁判集民事158号659頁)。〔中略〕
〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕
 前記のとおり、本件解雇は、解雇権の濫用として無効であり、労務提供の受領拒否による甲事件原告らの労務提供の履行不能は、債権者である被告の責めに帰すべき事由に基づくものであるから、甲事件原告らは、反対給付としての賃金請求権を失わないものというべきである(民法536条2項本文)。