全 情 報

ID番号 07883
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 大阪西マツダ事件
争点
事案概要  雇用期間一年の雇用契約を一九回(二〇年)にわたって更新し、中古車輸出業務に従事してきたスリランカ国籍のXが、Yから平成一二年三月の時点で、平成一三年三月三一日で契約が終了することを述べられており、その後、帰国費用の支給や平成一三年二月二一日以降、退職に関する手続を行う過程でもYに対して更新されないことにつき抗議ないし明確な異議を述べていなかったことから、退職はやむを得ないものとして黙示ないし明示で承諾していたものとして、期間満了を理由とする雇止めにつき、合意が成立したとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法14条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2001年11月14日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成13年 (ヨ) 10068 
裁判結果 却下
出典 労経速報1792号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 債権者が同年三月末日までに、契約の更新がなされないことについて、明確に抗議したと認めるに足る疎明はなく、むしろ同年四月九日付けで債務者に送付した「契約条件不履行に対する異議申し立て」と題する書面においても、賃金がワーキングビザ取得のために作成した契約書と異なっていたことや、退職金の支給や、雇用保険への加入手続の不備などについて問い合わせてはいるが、契約が終了することについては、何ら触れていない。また、帰国費用について、平成一二年の賞与支給時に分割されて支給されたのは、前年度は結局退職しなかったために支給されなかったことを考慮すると、平成一二年三月の更新時に、退職を前提とした話合いがなされたためであると推察されるし、上記異議申立書においても、住宅手当の減額がなされたにもかかわらず、帰国費用が平成一一年当時と同額であったことについて何ら不満が述べられていないのは、上記(1)カの認定のように、住宅手当の減額について予め債務者から申入れがあり、債権者も了承していたからであると認められる(債権者が記述するように(書証略)、債務者が住宅手当を一方的に半額に減額しており、これが帰国費用の金額に相当するとの認識を債権者が有していたのであれば、帰国費用が実質的には雇用保険の不足分の補償であることから、何らかの抗議があるのが自然であるが、そのような形跡は認められない)。これらの事情によれば、上記認定のとおり、平成一二年三月の時点で、債務者は、平成一三年三月末日で契約が終了することを債権者に告げており、その後、帰国費用の支給や、平成一三年二月二一日以降、退職に関する手続をなす経過においても、何ら債権者が更新がなされないことについて抗議ないし明確に異議を述べるなどしていないことによれば、債権者自身においても、同年三月末日で退職すること自体はやむを得ないとして、明示又は黙示の意思表示によってこれを承諾していたことが認められる。〔中略〕
 以上によれば、債権者と債務者の雇用契約は、平成一三年三月末日で終了したというべきであり、その余の点について判断するまでもなく、債権者の申立ては理由がない。