全 情 報

ID番号 07895
事件名 懲戒処分無効確認請求事件
いわゆる事件名 大阪石油運送事件
争点
事案概要  一般区域貨物自動車運送事業等を目的とする従業員約三〇名ほどの株式会社Yの従業員で、労働組合分会の分会長であったXが、〔1〕Xが一か月半の間に引き続き二件の過失事故を発生させ、事故多発に対する防止策等を理由に、二〇KLタンクローリー車乗務から一四KLタンクローリー車へ乗務への乗換えを命じられ(業務命令)、又〔2〕右過失事故とYの代表取締役に対し暴言を言ったことを理由に、出勤停止処分(懲戒処分)とされたことから、Yに対し、〔1〕については平等原則等に違反し、使用者の業務命令権の濫用であり無効、又〔2〕については、懲戒権の濫用に当たり無効であると主張して、Yに対し、右業務命令及び懲戒処分の無効確認を求めるとともに、Yによる無効な業務命令及び懲戒処分によりXが受けたとする損害(賃金相当額、慰謝料)について、不法行為に基づく損害賠償の支払を請求したケースで、〔1〕については、Xはトレーラーに乗務するようになってから、五回も事故を起こし、又その事故も後方確認を怠るという内容の運転ミスのものも含まれていることなどからすれば、YがXに対し乗務する車両の変更を命じたことも合理的な理由があるとし、又平等原則に違反するとまではいえないなどとして、本件業務命令は有効、〔2〕についても、本件懲戒処分については就業規則に該当する処分事由があり、有効としてXの請求がすべて棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条9号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
裁判年月日 2001年12月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 7197 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1796号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 前記認定のとおり、原告は、トレーラーに乗務するようになってから、五回も事故を起こし、また八尾ステーションでの事故は、後方確認を怠るという内容の運転ミスであることなどからすれば、被告が、原告に対し、乗務する車両の変更を命じたことも合理的な理由があるといえる。
 原告は、被告には、他に複数回事故を発生させた者や、重大な事故を発生させた者もいるにもかかわらず、乗務変更を命じられた者はいないことなどを理由に、本件業務命令は、平等原則に反し、業務命令権の濫用であると主張する。しかし、平成九年以降、他の従業員(労働組合員を含む)の事故回数は一ないし二回であり、原告は事故を起こす回数が三回と最も多いこと(証拠略)、また被告では原告以外にも乗務変更を命じられた者もいることや(人証略)、平成一二年四月一日の八尾ステーションでの事故の態様は、後方への進行に際しての安全確認の懈怠という基本的なミスであることなどからすれば、本件業務命令が平等原則に違反するものとまではいえない。
 また、原告は、本件業務命令は、労働協約に反すると主張するが、労働条件の変更に労使の協議を要するという当該協約は、労働基準法改正に伴う措置についてなされたものであり(書証略)、本件業務命令のような場合を想定したものとは認められないことから、前記原告の主張は採用しえない。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
 原告が平成一二年二月二五日と同年四月一日に事故を起こしたことは、前述のとおりである。また証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、当初、相手車両に責任があると虚偽の報告をしたこと、被告代表者が業務上横領しているということを発言したことが認められる。
 この点、被告は、平成一二年四月一日の八尾ステーションでの事故に関し、原告が、上司に報告しないでほしいと言ったと主張するが、これを否定する(人証略)に照らし採用できない。
 また、原告は代表者に対する発言は、代表者の問いかけに対し伝え聞いたことを発言しただけであると主張するが、(書証略)に照らし採用できない。
 (2) 以上によれば、本件懲戒処分については、処分理由があると認められる(就業規則五九条五号、一一号、二〇号、六〇条、書証(略))。
 これに対し、原告は、他の事故を起こした者と比較して、原告に懲戒処分を行うことは懲戒権の濫用であると主張するが、事故を起こした者の中には、始末書を提出している者がおり(人証略)、これは実質的には、懲戒処分としてのけん責処分にもあたるものともいえること、原告の場合は、事故のみならず、代表者の名誉を毀損する発言も行っていることなどを考慮すれば、三日間の出勤停止が過重な処分であるとまではいえず、原告の主張は採用できない。