全 情 報

ID番号 07935
事件名 従業員の地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ナショナルエージェンシー事件
争点
事案概要  パーティー会場の企画及び運営等を業とする株式会社Y1に、来客、電話の対応、ワープロによるY1の見積書・請求書の作成を業務内容として雇用されていたがXが、〔1〕従前より行ってきた仕事を拒否した、〔2〕社長Y2にマイクを突きつけて発言を強要したとの理由で、懲戒解雇され、その後右懲戒解雇の意思表示を撤回することなどを内容とする和解が成立しそれを受けてY1に復職したが、その後、会社営業不振のためとの理由で整理解雇されたことから、Y1に対し、本件解雇は解雇権の濫用で無効であるとして、従業員の地位の確認及び賃金の支払を請求したケースで、本件解雇には人選の合理性が認められず、また解雇に先立ち、Y1はXに経営状況等について何らの説明も行っていないことなどに鑑みれば、解雇は合理的理由がなく、また社会通念上相当性を有せず、解雇権の濫用であり無効として、Xの請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法89条3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 2002年3月22日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 7899 
裁判結果 一部却下、一部認容、一部棄却
出典 労経速報1814号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
〔解雇-整理解雇-整理解雇基準・被解雇者選定の合理性〕
 Y2社長は、前記金融機関への経営の改善策を策定する平成一三年五月八日の時点で、すでに原告の解雇を念頭に置いていたが(被告代表者本人)、〔1〕当時、被告では、原告と同じく事務を担当するものとしてAがおり、また原告に対する本件解雇後の一か月後にはBが退職していること、〔2〕原告は、大阪イベントの見積書作成の拒否を契機に、Y2社長やC監査役と対立し、Y2社長とは、しばしば言い争う状態となり、結局、その就労態度の悪さを非難されて懲戒解雇され、本件仮処分事件を申立て、和解により復職するも、復職後一か月もたたないうちに整理解雇の対象とされていることからすれば、原告を本件解雇の対象とした人選について合理性があるとは認められない。
 この点、被告は、原告には、復職後一か月で八件ほどしか見積書作成の業務を与えられなかったと主張するが、これは、原告退職後、原告の業務をAが行なっており、原告の復職後もこれが続けられたためであり(原告本人)、懲戒解雇後復職までの間で原告の本来担当すべき業務量が減ったためではないから、被告の主張は採用しえない。なお、原告は、自己の担当業務について、ワープロでの見積書、請求書の作成、来客への対応のみであるかのように主張するが、原告は、これ以外の業務にも従事しており、原告自身、臨機応変に対応していたと供述するところであるから(原告本人)、入社時にかかる業務内容の限定がなされていたとの原告の主張は採用しえない。
 そして、上記人選の合理性のほかにも、被告は、同年一〇月には一名新たに営業担当従業員を採用していることや、本件解雇に先立ち、被告は、原告に、被告の経営状況等について何らの説明も行っていないことなどに鑑みれば、本件解雇は、合理的理由がなく、また社会通念上相当性を有せず、解雇権濫用として無効である。