全 情 報

ID番号 07976
事件名 文書提出命令申立事件
いわゆる事件名 神戸東労働基準監督署長(文書提出命令)事件
争点
事案概要  学習塾Aで講師を務めていた息子Bがくも膜下出血で死亡したことから、その親Xが、Bの死亡はAの安全配慮義務違反等に基づく損害賠償を請求した基本事件につき、神戸東労働基準監督署長(Y)に対し、Bの業務が過重であったことを立証するため、労災認定(基本事件提起前にXはYから遺族保障給付等の支給決定を受けている)に係る各文書(同僚よりの聴取書、地方労災員作成の意見書等)の提出を請求したケースで、本件各文書は民訴法二二〇条四号のいわゆる一般義務文書に該当し相手方には本件各文書の提出義務があるというべきであるとしたうえで、本件は、Xの保険各文書に対する書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合に該当するとしてXの請求が認容された事例。
参照法条 民法415条
民事訴訟法(平成8年改正前)220条4号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2002年6月6日
裁判所名 神戸地
裁判形式 決定
事件番号 平成13年 (モ) 1463 
裁判結果 認容
出典 労働判例832号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 民訴法220条4号ロによると、申立人は、その申立てにかかる文書が、「公務員の職務上の秘密に関する文書」でないこと、またはその提出により「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」文書でないことを主張・立証しなければならないというべきである。
 もっとも、申立人は申立てにかかる文書を所持しておらず、当該文書の記載内容を具体的に認識することは困難というべきであるから、文書を所持する相手方が提出義務のあることを争うときは、同条号ロの除外事由に該当する具体的な事情を反証する必要があり、反証のない限り、除外文書に該当しないことが推認されると解するのが相当である。
 そして、同条号ロがいわゆる公務秘密文書を文書提出義務の除外文書として類型化した趣旨は、公務員の職務上の秘密が文書に記載されている場合に、当該秘密を保護して公務の民主的能率的遂行を確保するとともに、当該除外事由を限定することで民事訴訟における真実発見の要請との調和を図る点にある。
 とすると、「公務員の職務上の秘密」とは、単に非公知の事項であるだけでなく、実質的にも秘密として保護するに値すると認められるものでなければならず、また、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」といえるためには、単に当該文書の一般的な性格などからみて所定の事情が生じる可能性が抽象的に存するというだけでは足りず、当該文書に記載された当該職務上の秘密の公開により、公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる可能性が具体的に存しなければならないと解される。