全 情 報

ID番号 08003
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 アジア航測事件
争点
事案概要  航空機による写真撮影等を目的とする会社Y1に勤務していた女性社員Xが、同僚である男性社員Y2に対して命令口調で消耗品の注文の依頼をしたことから口論となり、Y2から左顔面を一回殴打され、事件後の同日に、Y1社が間に入り相方とともに和解したが、Xは一週間の通院治療を要するとの診断を受けた後も頭痛等を感じるとともに当該暴行を考えると体が震えるなどの症状を起こすようになり通院を継続しつつ欠勤する一方で、和解したことを後悔し、Y1社にY2の謝罪を求めたところ、Y1社からは、Y2には治療費等を負担させて示談の方向で仲介する方針でありXについては当面出勤扱いするとの通知を受けたが、その後、Y1社から本件事件を双方で協議することと及び欠勤の釈明を求める内容証明郵便が送付され、事件発生から約四か月目以降は賃金が支払われなくなり、さらにその約五カ月後には休職処分を受け、その後、事件発生から約二年半後をもって、正当な理由なく職場離脱し長期欠勤を続けたこと等を理由に就業規則に基づき解雇されたことから、〔1〕Y1社に対しては使用者責任に、Y2に対しては不法行為責任に基づく損害賠償を、〔2〕Y1社に対しては、Xの休業についてはY1社に責任があり本件解雇は不当であり、解雇権の濫用であるなどと主張して雇用契約上の地位確認及び賃金支払(完治するまで賃金支払約束をしていたと主張して賃金支払が停止された以降の分)を請求したケースの控訴審(XY控訴)。; 〔2〕についてはXに解雇事由はなく本件解雇は権利の濫用に当たり無効であるとしたうえで、地位確認請求についてのみXの請求を認容した原審の判断が維持され、〔1〕についても、原審と同様、Y2にはその暴行により生じた相当因果関係の範囲内の損害を賠償する責任があり、また本件暴行はY1社の業務の執行につき加えられたものであるとしてY1社もY2と連帯して損害賠償責任を負うとしつつ、賠償額が原審の二五四万円から一九〇万円に減額され(原審ではXの損害額を本訴提訴までの損害額のうち六割としていたが、Xの頭痛やめまい等の症状拡大が心因的、精神的要素によることが大きいことを考慮して控訴審では四割に限るのが相当とされた)、Yの控訴が一部認容され原判決が変更された(また控訴審で追加されたXの休業補償に基づく賃金支払請求も棄却された)事例。
参照法条 民法709条
民法715条
労働基準法2章
労働基準法89条3号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤
裁判年月日 2002年8月29日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ネ) 3877 
裁判結果 被告ら控訴一部認容・一部棄却、原告控訴棄却(上告)
出典 労働判例837号47頁
審級関係 一審/07881/大阪地/平13.11. 9/平成12年(ワ)2173号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
〔解雇-解雇事由-無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤〕
 当裁判所は、1審原告の請求は、1審被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求につき、その損害額を主文1項の(1)記載のとおり変更するほかは、原判決の認容する限度で理由があり、その余は理由がないものと判断する。〔中略〕
 1審原告に生じた損害は、1審被告Y2による暴行に起因するものではあるが、1審原告の心因的要素がかなり大きいことを考慮し、本訴提起までの損害額のうち4割に限り認めるのが相当である。