全 情 報

ID番号 08004
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 日本鉄道建設公団ほか(横浜人活センター・本訴)事件
争点
事案概要  国鉄東京南鉄道管理局横浜貨車区に設けられた人材活用センターにおいて、国鉄職員であったX1~X5(国労組合員)が、管理者に暴力をふるった等の事由により、国鉄からいずれも懲戒免職処分を受けたところ、免職処分が発令された日に開催された設立委員会で国鉄作成の採用候補者名簿に基づいて新会社職員の採用が決定される際、Xらは名簿に記載されていなかったために採用されなかったことから、同各処分は違法無効であると主張して、主位的請求として、X1~4については、国鉄の貨物鉄道事業を引継いだY1に対し、X5については国鉄の旅客鉄道事業を引き継いだY2に対し、それぞれ従業員たる地位の確認(X3を除く)及び未払賃金の支払を請求し、予備的請求として、Y3(事業団から一切の権利及び義務を承継するものとされた鉄建公団)に対し、職員たる地位の確認(X3を除く)及び未払賃金の支払を請求したケース。; 主位的請求については、本件各免職処分はその対象となる非違行為の存在を認めることはできず、それゆえ違法であって効力を有しないものというべきであるとしたうえで、設立委員から採用通知を受けることが承継法人と労働契約関係の創設の唯一不可欠の要件であり、採用通知がない場合には、その前段階である採用候補者名簿への記載の有無のいかんにかかわらず、国鉄職員について承継法人との労働契約関係の創設の効果が発生する余地がないと解されるところ、X1らのいずれも、設立委員から採用通知を受けていないのであるから、承継法人の成立時点で承継法人のいずれとも雇用関係が創設されることなく、この点で、Y1及びY2の従業員たる地位の存在をいうX1らの主張は失当に帰するというべきであるなどとして、請求が棄却された。; 予備的請求については、承継法人が昭和六十二年四月に成立すると同時に国鉄は事業団に移行し、承継法人に承継されない国鉄の権利義務は事業団に帰属するとされているのであるから、国鉄がX1らに対してした本件各免職処分が無効である以上、X1らは国鉄の権利義務を承継した事業団の職員たる地位を取得することは明らかであり、その事業団から一切の権利及び義務を承継したY3の職員の地位を有することになるとして、その請求の一部が認容された事例。
参照法条 労働基準法89条3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 2002年8月29日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 1019 
裁判結果 一部認容、一部却下、一部棄却(控訴)
出典 労働判例836号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕
 確かに、証拠(証拠略)によれば、本件テープには暴力という文言は少なからず出てくるものの、その文言は午後4時10分ころの通告の直後から頻繁に現れ、ある特定の個所だけで発せられているものでないと認められること、本件テープの反対側の面(A面)には、兼務職員を挑発してその挑発に乗った兼務職員の行動を現認すべき旨の、管理者らの打合せとおぼしき内容の会話が録音されていることが認められること、証拠(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、当時、兼務職員は管理者との間でしばしば激しい対立を起こしていたが、このような状況の中で、管理者は、ささいな身体の接触のような出来事でも、これを暴力ないし暴力行為などと現認するような事跡があったことが認められること、などの点からすれば、本件テープに暴力という文言が出ていることから直ちにA助役が供述するような暴行が起きていたことを認めることは困難といわざるを得ない。〔中略〕
 両助役及び原告X5の以上の各供述を対比してみると、原告X5の供述は両助役の供述とも大枠で一致するといえるが、両助役側は身体が接触したことを殊更暴力として誇張して供述しているのではないかという疑いを否定することができない。そして、証拠(証拠略)によれば、本件第2暴行については、本件テープにその様子が録音されていないことが認められることを合わせると、結局、本件第2暴行もまた、その存在を認めることは困難といわざるを得ない。〔中略〕
 本件第1、第2暴行は、いずれもその存在を認めることができない。〔中略〕
 したがって、本件各免職処分は、その対象となる非違行為の存在を認めることができないのであるから、違法であって効力を有しないものというべきである。