全 情 報

ID番号 08034
事件名 解雇予告手当等請求事件(487号)、他事件
いわゆる事件名 フジ興産事件
争点
事案概要 化学プラント設計等を目的とする株式会社Y1社の設計部門のあるセンターに勤務していたXが、得意先の担当者らの要望に十分応じずトラブルを発生させたり、上司に暴言を吐くなどとして職場の秩序を乱したことなどを理由に、懲戒解雇されたため、〔1〕Y1社に対し本件懲戒解雇は無効であるとして雇用契約上の地位確認および未払いの賃金等の支払のほか本件懲戒解雇は違法であるとして不法行為に基づく損害賠償請求を、また〔2〕Y1社の代表取締役Y2らに対し、不当解雇の決定に携ったとして、民法709条ないし商法266条の3に基づき損害賠償等を請求したケースで、Xには懲戒解雇事由該当性が認められ、本件懲戒解雇は有効であるとして、〔1〕〔2〕の請求がともに棄却された(なお、Xが〔1〕〔2〕以外に行っていた時間外手当の支払等の請求については一部認容されている)事例
参照法条 労働基準法89条9号
労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
雑則(民事) / 附加金
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の根拠
裁判年月日 2000年4月28日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 487 
平成8年 (ワ) 604 
平成9年 (ワ) 5753 
裁判結果 一部認容、一部棄却(487号)、棄却(604号、5753号)
出典 労経速報1859号10頁
審級関係 上告審/08227/最高二小/平15.10.10/平成13年(受)1709号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕
 遅くとも平成六年三、四月以降の原告の言動は、被告会社が解雇で離職票を出さない、すなわち従業員を普通解雇しえないことを知りながら、「俺を首にしろ」と述べたりして解雇を求める言動を行ったり、MAD事業に従事するようにいった被告Y3の業務命令にも従わなかったり、遅刻を繰り返す(書証略)といったものであり、これは就業規則第二八条七号に該当するといわざるをえない。
 そして原告の技術者としての能力は被告会社も認めるところであるが、顧客の要望に従うことは被告会社の業務において必要であり(被告Y3)、たとえそれが技術的に不十分な指摘であったとしても、業務命令であればこれに従うべきであったにもかかわらず原告は従わなかったこと、原告と被告会社との間の原告の就労態度についてのトラブルは約一年にも及ぶものであったこと及び通常原告が所持しているはずのないタイムレコードである「Working Hour Record」等を被告会社の書類を所持していることなど諸般の事情に照らすならば、懲戒解雇という結果もやむをえないものといわざるをえない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の根拠〕
 原告は、被告会社のA事業所には就業規則がない旨主張するが、本件懲戒解雇時に就業規則は存在していた(書証略)。原告は書証(略)は被告会社の就業規則でありA事業所のものではないと主張するが、被告会社において、書証(略)が本社のみで効力を有する就業規則であると認めるに足りる証拠はない。
〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定方法〕
 原告の時間外賃金は毎月一五日締め、二五日支払であった(当事者間に争いのない事実)。原告の年俸は五五二万円であった。原告は、平成五年二月一九日から平成六年六月一五日まで、被告会社で勤務していたが、被告会社では、日曜、祝日、第二、第四以外の土曜日、年始年末(一二月二九日から一月三日)、夏期(八月一四、一五日)が休日とされていた(書証略)ことから、平成五年六月一日から平成六年五月末までの一年間の所定労働日数は二六六日であった(書証略)。従って、原告の一日あたりの賃金額は二万〇七五一円となるから、一時間あたりの賃金額は、右一日分の賃金額を一日の法定労働時間数である八(労基法三二条二項)で除した二、五九三円、時間外の賃金単価は、さらにこれを一・二五倍した三、二四二円となる。
〔雑則-附加金〕
 付加金は右同額(四二万四三〇一円)が相当である。