全 情 報

ID番号 08067
事件名 労働契約上の地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ネスレ日本(諭旨解雇・本訴)事件
争点
事案概要 労使間の激しい対立・紛争のなかで生じた上司への傷害事件を理由として、食品メーカーYの従業員で組合員でもあるXら2名に対し、Yが懲戒解雇に準ずる処分として論旨退職処分をしたところ、Xらが諭旨解雇は無効であるとして、Yに対し労働契約上の従業員たる地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後の賃金支払い及び年2回の賞与並びにこれらに対する商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求めたケースにおいて、上司への傷害事件が発生したとされる時期から極めて長い年月を経て処分が決せられた経緯に不自然、不合理な点があるなど、客観的にみて懲戒権の行使に合理的な理由を欠くとしてXらの請求を認容(賃金の将来分についての請求は却下)した事例。
参照法条 労働基準法89条9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 2002年10月11日
裁判所名 水戸地龍ケ崎支
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 136 
裁判結果 一部認容、一部却下(控訴)
出典 労働判例843号55頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 被告が平成13年4月17日に至り原告らを主として平成7年7月以前の事由(特に原告X1については懲戒解雇事由2の平成5年10月26日の件、原告X2についてはそのほか懲戒解雇事由3の平成6年2月10日の件)により諭旨退職とした経緯には、以下のとおり不自然な点が見受けられるのであって、果たして懲戒権を行使するに足る十分な合理性があったのか疑問を入れる余地があるといわざるを得ない。〔中略〕
 被告が懲戒解雇に準ずる処分として平成13年4月17日付けでなした原告らに対する諭旨退職処分は、その主たる理由である2件の傷害事件が発生したとされる時期(すなわち平成5年10月ないし平成6年2月)から極めて長い年月を経て処分が決せられた経緯に不自然、不合理な点があり、上記事件の事実関係自体も被告の主張どおりであるとは認め難く、その余の理由とされたところにも処分を合理的かつ相当とみるに足る事実は認め難いことからすれば、客観的にみて懲戒権の行使に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認し得ないものというほかなく、いずれも懲戒権の濫用に当たり無効であるから、これに基づき原告らを懲戒解雇としたことも当然に無効というべきである。
 したがって、原告らは、それぞれ懲戒解雇とされた平成13年4月26日以降も被告の従業員たる地位を有するものと認められる。