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ID番号 : 08591
事件名 : 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 : 日本瓦斯(日本瓦斯運輸整備)事件
争点 : ガス供給会社から出向し、休職を3度更新した後退職扱いとされた者が地位確認等を求めた事案(労働者敗訴)
事案概要 : ガス供給会社から子会社への出向を命ぜられ、体調不良を理由に休職を3度更新した後退職扱いとされた従業員が、出向元に対する雇用契約上の地位確認、出向元と子会社に対する損害賠償を求めた控訴審である。 第一審東京地裁は、休職は出向元、出向先双方の就業規則の規定を適用し、所定の休職事由が存在するとしてなされたもので有効であり、休職期間満了後再度休職を命ずるか否かは権利の濫用に当たらない限り使用者の裁量に委ねられており、出向元が4度目の更新を行わなかった点に不当な点はなく退職の効力が生ずるとして地位確認の訴えを棄却し、休職期間中の賃金請求については、休職期間中は原則無給とする出向元が、休職6か月目以降を無給とする出向先就業規則に基づき休職6か月目以降の賃金を支払わなかったことに何ら不当な点はないとして棄却した。これに対し第二審東京高裁は、一審の判断の上に立ちつつ、出向を不当に延長したとの労働者の主張に対し、休職を続ける以上出向期間を延長する措置には理由があるとし、適正な職場への配転がなかった旨の主張には、診断書からもさらに休職をさせるべきと判断したことは相当であったとして、控訴を棄却した。
参照法条 : 労働基準法2章
体系項目 : 配転・出向・転籍・派遣/出向命令権の根拠/出向命令権の根拠
休職/休職の終了・満了/休職の終了・満了
休職/傷病休職/傷病休職
裁判年月日 : 2007年9月11日
裁判所名 : 東京高
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成19(ネ)2507
裁判結果 : 棄却(上告)
出典 : 労働判例957号89頁
審級関係 : 一審/東京地/平19. 3.30/平成17年(ワ)26131号
評釈論文 :
判決理由 : 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠-出向命令権の根拠〕
〔休職-休職の終了・満了-休職の終了・満了〕
〔休職-傷病休職-傷病休職〕
 (6) 控訴人は、被控訴人日本瓦斯は、平成16年10月、本件出向後3年が経過し、かつ、控訴人が被控訴人運輸整備で勤務することの不具合を訴えていたにもかかわらず、出向規程4条の「特別の事由が生じたとき」の要件を考慮することなく漫然と出向を延長したものであって、不当であると主張する。  たしかに、出向規程第4条は、出向期間は原則として3年以内とし、業務の都合あるいは特別の事由が生じたときはその期間を延長することがあると規定しているところ、本件出向は平成13年10月1日付けでされたものであるから、平成16年10月には3年を経過することになる。しかし、証拠(〈証拠略〉、証人A、控訴人本人)によれば、控訴人は、同年9月から11月にかけて体調不良により有給休暇を取ることが多くなり、同年11月1日付け及び同月29日付け報告書(〈証拠略〉)を被控訴人運輸整備に提出し、現職への復帰は困難であるが他の業務での就労は可能であり、その意欲もある旨伝えたこと、前記報告書にはそれぞれ同年10月29日付け及び同年11月26日付け診断書が添付されていたが、いずれの診断書も、病名を自律神経失調症とし、今後1か月の休養加療が必要であるとしていたので、被控訴人運輸整備は、被控訴人日本瓦斯と協議の上、控訴人に休職を命ずる必要があると判断し、本件休職を発令したことが認められ、これらの事実によれば、控訴人につき出向措置を延長する必要があったということができる。控訴人の前記主張は、採用の限りでない。  (7) 控訴人は、プロパンガスの充填作業での就労は困難であったが、他の部署での就労は可能であったにもかかわらず、被控訴人日本瓦斯は控訴人を就労させなかったと主張する。  たしかに、前記(6)のとおり、控訴人は、被控訴人運輸整備に提出した報告書において、現職への復帰は困難であるが他の業務での就労は可能であり、その意欲もある旨伝えているが、前記報告書に添付された診断書は、病名を自律神経失調症とし、今後1か月の休養加療が必要であるとしていたので、被控訴人運輸整備は、被控訴人日本瓦斯と協議の上、控訴人に休職を命ずる必要があると判断し、本件休職を発令したというのであり、そうであれば、被控訴人らが本件休職を発令し、控訴人に就労させなかったことは相当である。したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。  (8) 控訴人は、他の部署での就労は可能であったにもかかわらず、被控訴人運輸整備は本件休職を発令したものであって、その根拠となる就業規則の適用も不当であり、また、被控訴人日本瓦斯は休職命令を発令していないし、仮に発令していたとしても、その根拠となる就業規則の適用が不当であると主張する。  しかし、被控訴人らが本件休職を発令し、控訴人に就労させなかったことが相当であることは、前示したとおりである。そして、その根拠となる就業規則は、被控訴人日本瓦斯については就業規則46条1項4号であり、被控訴人運輸整備については就業規則50条1項1号である。控訴人の前記主張は、採用の限りでない。  (9) 控訴人は、平成17年8月15日の休職期間の終了の後に休職期間の延長も復職もさせなかったことは、それまで休職期間の延長をしてきた経過からしても、具体的な根拠や説明を欠く不当な処分であると主張するが、この点に関する原判決の認定判断は、挙示証拠に照らして正当と是認することができ、控訴人の前記主張は、採用することができない。