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ID番号 : 08759
事件名 : 雇用関係確認等請求上告、同上告受理申立事件
いわゆる事件名 : 伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件
争点 : 銀行に派遣された労働者が雇止めを受けたため雇用関係確認、賃金及び損害賠償を請求した事案(労働者敗訴)
事案概要 : 派遣会社から銀行に派遣されていた労働者が、雇止めされたのは違法、無効であると主張して、雇用関係の確認、賃金及び不法行為に基づく損害賠償を請求した事案の上告審である。 第一審松山地裁は、派遣会社と当該労働者との雇用契約は登録型雇用契約であり、契約期間満了により契約関係は終了しており、また派遣先銀行との間で黙示の労働契約が成立したとも認められないとして、請求をいずれも棄却した。 第二審高松高裁は、第一審の判断を維持しつつ、本件雇用契約は銀行での就労を前提として派遣会社との雇用契約を半年ごと反復更新してきた登録型雇用契約であり、したがって、解雇権濫用法理を類推できないとして雇用関係の確認、賃金請求について棄却したが、支店長の行為は大きな精神的苦痛を与えたとして不法行為に基づく損害賠償請求を認めた(慰謝料1万円)。 最高裁第二小法廷は、上告申立てについては民訴法318条1項に該当しないとして受理を認めず、上告については民訴法312条1項又は2項に規定する上告事由に該当しないとして棄却した(受理すべきとする反対意見あり)。
参照法条 : 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律1条
労働基準法
民法415条
民法623条
民法709条
体系項目 : 労基法の基本原則(民事)/労働者/派遣労働者・社外工
解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償請求
裁判年月日 : 2009年3月27日
裁判所名 : 最二
裁判形式 : 決定
事件番号 : 平成18(オ)1186、平成18受1370
裁判結果 : 棄却、不受理
出典 : 労働判例991号14頁
労働経済判例速報2047号25頁
審級関係 : 一審/08172/松山地平成15. 5.22/平成12年 (ワ) 757号 控訴審/08482/高松高平成18. 5.18/平成15(ネ)293号
評釈論文 :
判決理由 : 〔労基法の基本原則(民事)-労働者-派遣労働者・社外工〕
〔解雇(民事)-短期労働契約の更新拒否(雇止め)-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
〔労働契約(民事)-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償請求〕
1 上告について
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
2 上告受理申立てについて
 本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
 よって、申立人の相手方いよぎんスタッフサービス株式会社(以下「相手方」という)に対する上告受理申立てについて裁判官今井功の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 裁判官今井功の反対意見は、次のとおりである。
 私は、本件のうち、申立人の相手方に対する請求に関する部分は、以下に述べる理由から、重要な法律問題を含む事件として、これを受理すべきものと考える。
 申立人は、昭和62年2月、特定労働者派遣事業を行っていた伊豫銀ビジネスサービス株式会社(以下「IBS」という)に派遣労働者として雇用され、その後平成12年5月までの13年間、6か月ごとにIBS又はその営業の譲渡を受けた相手方との間の雇用契約を更新されて、継続的に伊予銀行の支店に派遣され、事務用機器の操作の業務に従事していたところ、同年5月に雇用契約の更新を拒絶された。原審は、本件雇用契約は、伊予銀行を派遣先とするもので、伊予銀行と相手方との派遣契約が終了したから、本件雇用契約も当然終了するとして、更新拒絶に合理的な理由があるか否かを実質的に判断することなく、更新拒絶を正当と判断した。
 本件は、〈1〉派遣労働者である申立人が派遣元であるIBS又は相手方にいわゆる「常用型」として雇用されていた者であるか、〈2〉長期間更新を繰り返された雇用契約の更新拒絶について認められるいわゆる「雇止めの法理」(客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには更新拒絶は許されないとする法理。最高裁昭和45年(オ)第1175号同49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁、最高裁昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁参照)が、派遣労働者の雇用契約についても適用されるかという2点において、派遣労働者の雇用関係についての重要な法律問題を含む事件である。
 〈1〉の問題点については、IBSは、申立人と雇用契約を結んだ時点では、特定労働者派遣事業の届出をしていたにすぎず、一般労働者派遣事業の許可を得ていなかったところ、特定労働者派遣事業とは、その事業の派遣労働者が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業をいうのであり、常時雇用される労働者でない労働者を雇用して事業を行った場合には、罰則を科されることになっていた。そして、申立人の雇用形態がその後変更された形跡はうかがわれず、更新拒絶の時点に至ったことからすると、申立人が「常時雇用される労働者」であって、申立人と相手方との間の雇用契約が常用型に当たると解する余地が十分にある。また、〈2〉の問題点については、申立人のように長期にわたって雇用契約の更新を繰り返されてきた労働者については、派遣労働者であっても雇止めの法理が適用される場合があり得るところ、本件がそのような場合に当たると解する余地があり、更新拒絶について合理的な理由があるか否かを判断しなければならないことになる。
 したがって、本件のうち上記部分を受理し、この点について上告審としての判断を示すのが相当であると考える。