全 情 報

ID番号 : 08894
事件名 : 地位確認請求事件
いわゆる事件名 : フェデラルエクスプレスコーポレーション事件
争点 : 国際航空貨物輸送会社の社員が、指定休日の削除は不当な就業規則の変更だとして争った事案(労働者勝訴)
事案概要 : 国際総合航空貨物輸送会社Y日本支社のエアポート部門に勤務するXらが、会社の定める休日とされていた4日間を休日から削除した就業規則の変更には合理性がないとして、上記4日間を休日として行使できる地位にあることの確認を求めた事案である。 東京地裁は、〔1〕就業規則変更により社員の受ける不利益の程度は必ずしも小さくないとし、〔2〕労働条件変更の必要性としても、業績の落ち込みにより経費削減施策を行う必要性があったことは認められるとしても、本件就業規則変更により社員に上記不利益を法的に受忍させることを正当化するまでの高度な必要性があるとまではいい難いこと、〔3〕変更後の就業規則の内容は、土日祝祭日を除いた休日のみをみれば半減しており、また指定休日廃止に対する代償措置もとられていないなど相当性には疑問が残ること、〔4〕Yと組合等との間で十分に労使間の利益調整がなされた上で本件就業規則変更がなされたとは到底いい難いことなどを総合的に考慮すると、本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすものとはいえないとした。その上で、Xらには同条による就業規則変更の拘束力は適用されず、Xらの労働契約の内容としては本件会社休日の4日間はいずれも休日のままとなり、Xらは本件会社休日を休日として行使することができるとした。
参照法条 : 労働契約法10条
労働契約法9条
体系項目 : 就業規則(民事) /就業規則の一方的不利益変更 /労働時間・休日
裁判年月日 : 2012年3月21日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成21(ワ)46930
裁判結果 : 認容
出典 : 労働判例1051号71頁
審級関係 :
評釈論文 :
判決理由 : 〔就業規則(民事)‐就業規則の一方的不利益変更‐労働時間・休日〕
 (2) 労働者の受ける不利益の程度(〈1〉)
 ア 前記(1)イのとおり、本件就業規則変更により本件会社休日が廃止され、年間所定休日は121日ないし122日となり年間総労働日数は243日又は244日となることから(1(2)サ)、計算上では、被告の従業員の年間所定労働時間は29時間程度増加し、これにより約2パーセントの賃金カットと同様の効果が生じていることになる。また、被告における年間所定休日は125日ないし126日から121日ないし122日に減ったことになり、土日祝祭日を除いた休日だけをみれば7日から3日に減っており、半減以上になっているといえる。〔中略〕
 (3) 労働条件の変更の必要性(〈2〉)〔中略〕
 (4) 変更後の就業規則の内容の相当性(〈3〉)〔中略〕
 以上を総合すれば、変更後の就業規則の内容の相当性については当然に認められるというものではなく、相当性があるといえるのか疑問が残るところといえる。
 (5) 労働組合等との交渉の状況(〈4〉)〔中略〕
 以上によれば、被告と本件組合等との間で実質的な交渉がなされ、十分に労使間の利益調整がされた上で本件就業規則変更がなされたとは到底いい難く、本件組合や従業員代表の一部が「恒久的」とする点などについて意見を述べても被告がこれに対して十分な検討及び対応をしていたものとはいえない。〔中略〕
 (6) まとめ
 前記((2)~(5))のとおり、本件就業規則変更により労働者の受ける不利益の程度は必ずしも小さいとはいえないこと、業績の大幅な落ち込みにより経費削減施策を行う必要性があったこと自体は認められるとしても、本件就業規則変更を行って労働者に上記不利益を法的に受忍させることを正当化するまでの高度な必要性があるとまではいい難いこと、変更後の就業規則の内容の相当性についても当然に認められるというものではなく、相当性があるといえるのか疑問が残る点も見受けられること、被告と本件組合等との間で実質的な交渉がなされ、十分に労使間の利益調整がされた上で本件就業規則変更がなされたとは到底いい難いことなどを総合的に考慮すれば、本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすものとはいえない。したがって、原告らには、労働契約法10条による就業規則変更の拘束力は適用されず、原告らの労働契約の内容としては本件会社休日の4日間はいずれも休日のままということになり、原告らは本件会社休日を休日として行使することができる。