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ID番号 08970
事件名 免職処分取消等請求事件
いわゆる事件名 東京都・東京都教育委員会(都立E中学)事件
争点 条件附採用教員に対する免職処分の取消等が争われた事案(教員一部勝訴)
事案概要 (1) 都教委の条件附採用期間を1年とする教員として採用され、都立中学校に勤務していたXが、同中学・高校の校長からXに対する特別評価所見の採用の可否につき「否」とされ、その後免職処分(本件処分)を受けたことについて、東京都(Y)に対し、校長の不当な評価に基づく都教委の本件処分の取消し及び校長からパワーハラスメントを受けたとして、慰謝料の支給等を求めたもの。
(2) 東京地裁は、本件処分を取り消し、その余の請求は棄却した。  
参照法条 地方公務員法6条
地方公務員法22条
教育公務員特例法12条
国家賠償法1条
体系項目 解雇(民事)/解雇事由/職務能力・技量
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償
労基法の基本原則(民事)/労働者/教員
裁判年月日 2014年12月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成24年(行ウ)668号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 判例時報2259号25頁
労働判例1110号5頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係 控訴後棄却、確定
評釈論文
判決理由 争点1(本件処分の適法性)
教育公務員特例法12条1項において、1年間の条件附採用期間を設けた理由については、同法23条で1年間の初任者研修を受けることと平仄をあわせたところにあるから、教員としての適格性を判断するにあたっても、本来、初任者研修による初任者への教育効果を踏まえて判断することが予定されているはずである。しかるに、十分な初任者研修が行われていないにもかかわらず、単なるXの未熟な人格態度をもって、直ちにXに教員としての適格性を欠くと判断することは相当ではない。
研修が十分なされない中でXが協調性等に欠けると即断することには多大な疑問がある。
仮に本件中学において、実のある初任者研修が行われれば、その研修効果による成長・改善の可能性はあったというべきである。
仮に本件中学以外の学校でXが初任者研修を受けていたならば、Xも成長を遂げ、免職されることはなかった可能性は十分に考えられるところである。同校校長の評価のように「どこの学校に行っても戦力にはならない」(証拠略)とまではいえない。同校校長の前記総合評価は、生活指導・進路指導に関する不合理な評価を含むほか、不十分な初任者研修にとどまった弊害に留意することなく判断したものとして、客観性を欠き、かつ不合理なものであったといわざるを得ない。
同校校長の上記総合評価が是正されるべきものとすれば、本件要綱によっても、Xは正式採用された蓋然性が認められる。
本件処分は、同校校長の判断、それに依拠した都教委教育長の判断に依拠しているものと考えられるところ、(中略)任命権者の判断は客観性を欠き、不合理なものであって、裁量権の逸脱、濫用があるものと認められるから、本件処分は違法であって取消しを免れない。
争点2(同校校長の行為が国家賠償法1条1項の違法な公権力の行使に該当するか)
同校校長がXに対し観察授業を実施したことが、国家賠償法上の違法な行為に当たると認めることはできない。
同校校長が平成23年9月にXの指導教員を不在にしたことを、国家賠償法上の違法な行為と認めることはできない。
同校校長はXの正式採用について「否」の判断をしたことが認められるが、それは、Xの教員としての行為に関する校長としての判断によるものであって、個人的な悪感情に基づくものとは認められない。そしてまた、Xに、教員として不適切な態度、事実があったことは前記認定のとおりである。
そうすると、同校校長のXの正式採用を「否」とした行為が国家賠償法違法な行為であると認めることはできない。