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ID番号 08972
事件名 配転命令無効確認等事件
いわゆる事件名 公益財団法人えどがわ環境財団事件
争点 自然動物公園の飼育職等に対する配転命令の効力が争われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 自然動物公園の飼育職等であった原告(X)らが、被告(Y)から平成24年4月1日付でなされた配転命令が無効であると主張して、本件配転命令に基づく勤務の義務がないことの確認等を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、本件配転命令は違法であるとしたが、不法行為による慰謝料の請求は認めなかった。  
参照法条 民法1条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2014年11月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)18217号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働経済判例速報2238号23頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係
評釈論文
判決理由 1 YのXらに対する配転命令権について
X1は、Yの固有職員であるところ、固有職員については、就業規程12条において、「この法人は、業務上の必要性があるときは、職員の勤務する場所、従事する業務の変更をすることができる」と定められている(書証略)。
X1は、勤務先を自然動物園又はポニーランドとする募集要項に応募し、作文と面接試験を経て採用されたこと(書証略)、募集要項において動物に関する専門的な資格や知識・技能が必要とされておらず、実際にも、高校普通科を卒業した者が動物飼育職として採用されていること(書証略、弁論の全趣旨)に照らすと、X1が職種を動物飼育職と限定されて被告に採用されたとは認められない。
したがって、Yは、X1に対する配転命令権を有する。
X2は、Yの一般契約職員であるところ、一般契約職員については、有期職員就業規程16条において、「この法人は、業務上の必要性があるときは、有期職員の勤務する場所、従事する業務の変更をすることができる」と定められている(書証略)。
X2は、勤務内容を「動物飼育に関すること」として採用されたのであり(書証略)、職種は動物飼育職に限定されているが、勤務地を自然動物園と限定されて採用されたとは認められない。
したがって、Yは、動物飼育職の範囲内でX2に対する配転命令権を有する。
2 本件配転命令について
配転命令については、業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、若しくは、労働者に対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき、当該配転命令は権利を濫用してされたものとして無効とされる。
X1に対する本件配転命令についてYの主張する異動の必要性は認められない上、(中略)人員配置上、事務職と動物飼育職とは別個の処遇がされてきたものを敢えて平成24年4月に変更する具体的な必要性も見当たらない。
したがって、X1に対する本件配転命令は業務上の必要性を欠くというべきである。
X2が、X1に同調して、飼育班内の人間関係を悪化させていたとのYの主張が前提を欠くことは、X1について説示したとおりである。
X2を同じ動物飼育職に異動させるのは基本的にはYの裁量の範囲内のことではあるが、(中略)YがX2の異動について主張する業務上の必要性が認められないこと、(中略)X1に対する本件配転命令が違法である以上、X1の同調者であることを理由にされたX2に対する本件配転命令も同列に違法と扱うべきことに照らすと、X2への本件配転命令も裁量権を濫用したものと認められる。
以上によれば、各Xに対する本件配転命令は違法なものと認められる。
本件配転命令は違法であるが、損害が認められないため、不法行為に基づく慰謝料請求権は認められない。