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ID番号 08987
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 東京医科歯科大学事件
争点 助教に対する研究業績不足を理由とする雇止めの効力が争われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 任期付きの助教として雇用された原告(X)に対する雇止めは無効であるとして、地位確認と未払賃金の支払を求めて提訴したもの。
(2) 東京地裁は、本件雇止めには合理的理由を認めることができないとし、本件雇止めは無効であるとした。
参照法条 労働契約法19条
体系項目 労働契約(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2014年7月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)11039号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1105号49頁
労働経済判例速報2227号28頁
審級関係
評釈論文 慶谷典之・労働法令通信2362号20~21頁2014年9月28日
大内伸哉・ジュリスト1482号4~5頁2015年7月
判決理由 1 更新の合理的期待について
任期のある助教にも、定年の定めのある職員就業規則が適用され、採用の日から35年以内の期間支給される初任給調整手当の定めのある職員給与規則が適用されること(書証略)に加え、(中略)本件大学の大学院医歯学総合研究科(歯学系)においては平成25年3月に任期が終了する3年任期の助教で再任を希望した33名のうち30名が再任されたことからすれば、任期のある助教も継続した雇用が前提とされているものと認められる。そして、(中略)X自身、過去2回の再任を経ていることからすれば、Xには、更新の合理的期待が認められる。
2 本件雇止めの合理的理由について
上記1のとおり、Xには更新の合理的期待が認められるのであるが、教員任期に関する規則において、再任の可否を決定するに際しては業績審査を行うものとされており(書証略)、原則として更新されるという期待までは認められない。再任の業績審査は、大学教員としての適格性の判断という性質上、本件大学の専門的裁量的な判断に委ねざるを得ないものであり、その判断過程に著しく不合理なものがない限り、雇止めの合理的理由が肯定されると解するのが相当である。
Xの再任不適とした判断過程についてのC教授の供述は、上記(略)のとおりの疑問を差し挟むことができるのであって、信用性に欠けるというべきである。
そうすると、Yが、一旦、Xを再任に適すると判断しながら、再任不適とした判断過程に合理性を認めるべき事情はなく、著しく不合理であったと認められる。
したがって、本件雇止めには合理的理由を認めることができない。