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ID番号 09008
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 学校法人金蘭会学園事件
争点 希望退職に応じなかった大学教授の解雇の効力が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 学校法人金蘭会学園(Y)が経営する千里金蘭大学の教授であったXが、次年度に担当する授業科目がなく、従事する職務がないことを理由として、Yから平成23年3月31日限り解雇されたことにつき、解雇権の濫用に当たり無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求め提訴したもの。
(2) 大阪地裁は、解雇は無効であるとして請求を認容し、大阪高裁も控訴を棄却し、確定した。
参照法条 労働契約法16条
体系項目 解雇(民事)/解雇権の濫用
解雇(民事)/整理解雇/整理解雇の必要性
裁判年月日 2014年10月7日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ネ)812号
裁判結果 控訴棄却、確定
出典 労働判例1106号88頁
審級関係 一審 大阪地裁/平成26年2月25日/平成23年(ワ)11200号
評釈論文
判決理由 当裁判所も、Xに対する本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、その権利を濫用したものとして無効であるものと判断する。
Yは、消費収支差額の赤字を年間約2億円以上の人件費の削除の必要性の根拠として主張するが、消費収支差額を算出する際に用いる消費収入は、学校法人の収入から学校法人の持分の増加である基本金組入額を差し引いたものであり、学校法人の長期的な経営の健全性を図る指標とはなりえても、当年度の収益性を図る指標としては適切ではないところ、他方、Yの当年度の損益に該当すると考えられる帰属収支差額は、(中略)平成22年度当時において改善傾向にあったのであるから、Yの主張は採用することができない。
学納金に占める人件費比率も平成19年度の約199%から約93%にまで低下し、帰属収支差額の赤字も解消には及ばないにせよ一定程度は圧縮できていたことを考え併せると、Yは、経営改善計画の目標達成までは未だ道半ばであったとはいえ、着実に成果を上げつつあったということができるから、Yが、本件解雇当時、年間約2億円以上の人件費の削減の必要があったものと認めることができない。
本件希望退職募集や本件解雇の時点で、財政面の理由からも、21名に及ぶ教員を対象とする人員削減の必要があったとは認められない。そうすると、平成22年6月時点において、Yが21名もの教員を対象として人員削減を行うことについて、Yの合理的な運営上やむを得ない必要性があったと認めることはできない。
Xが担当する職務のない教員として人員削減の対象とされる理由はなかったというべきであり、Yにおいては、少なくとも平成22年5月頃まで、教養科目の担当者としても、教養教育におけるカリキュラム改革の管理責任主体としても、Xを含むB機構に所属することとなった教員を必要としていたことは明らかである。
以上によれば、Xの請求をいずれも認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。