全 情 報

ID番号 09045
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 日本郵便(雇止め)事件
争点 継続雇用基準を満たしていないとされ定年退職した元職員の労働契約の存続が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 郵便業務等を行う被告Y社において従前雇用され、定年を迎えたXが、平成24年法律第78号による改正前の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」という。)9条2項所定の「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準(以下「継続雇用基準」という。)を満たす者を採用する旨の制度により再雇用されたと主張して、Yに対し、労働契約上の地位確認並びに同契約に基づく月額賃金と遅延損害金の支払を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、XがYの継続雇用基準を満たしているとしてYの雇止めは有効ではないとし、Xの請求を認容した。
参照法条 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項
体系項目 労働契約(民事)/成立/成立
裁判年月日 2015年4月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)7202号
裁判結果 認容
出典 労働経済判例速報2266号20頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔労働契約(民事)-成立-成立〕
 Xが上記継続雇用基準を満たしているものと判断される場合には、本件において、XY間の従前の雇用契約が定年により終了したものとすることをやむを得ないものと認めるべき特段の事情はうかがわれない(この点に関する特段の主張立証はない。)以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない。したがって、この場合は、高年法の趣旨等に鑑み、XY間において、Xの定年後もYの高齢再雇用制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているとみるのが相当であり、その期限や賃金等の労働条件については、Yの高齢再雇用制度の定めに従うことになるものと解される(最高裁昭和45年(オ)第1175号同49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁、最高裁昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁、最高裁平成23年(受)第1107号同24年11月29日第一小法廷判決・裁判集民事242号51頁参照)。
 上記の場合、XY間の雇用契約の期間は平成25年4月1日から1年間、賃金は月額22万1400円、締日・支払日は各月末日締め・当月24日払いとなるものと認められるが、上記雇用期間については、高齢再雇用社員就業規則(甲2)9条1項において、原則として満65歳に達した日以後における最初の3月31日が到来したときまで更新される旨が規定されており、同項所定の不更新事由の存在もうかがわれないことから、平成25年4月1日から1年以上が経過した後の本件口頭弁論終結時においても、上記雇用関係が存続しているものと認めるのが相当である。
2 そこで、争点とされている平成23年度の人事評価における「営業・業務実績」、「業務プロセス」及び「顧客志向」の各評価項目の評価並びに面接試験の評価について検討するに、少なくとも「営業・業務実績」の評価項目については、以下のとおり、Yによる「△」の評価が人事評価の裁量権の範囲を逸脱した不当なものであり、本来「○」と評価されるべきものと認められることから、上記人事評価の他の各評価項目の評価及び面接試験の評価に関するYの主張を前提としても、平成23年度の人事評価結果を附属覚書36条・別紙11所定の点数化の方法に従って点数化した合計点は、80点以上の点数(82.1点(3.75点×3+14.17点×5))となる。したがって、Xは、Yの高齢再雇用制度における所定の継続雇用基準を満たしているものと認められる。