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ID番号 09064
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 類設計室(取締役塾職員・残業代)事件
争点 取締役の地位を与えられていた学習塾職員の労働者性が問われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 学習塾の経営等を目的とする被告Yに雇用されていた原告Xが、時間外労働を強いられていたのにもかかわらず、Yの取締役であったことを理由に残業代の支払を受けなかったとして、未払残業代及びこれに対する遅延損害金、退職した日以降の賃金及び賃金の支払の確保等に関する法律6条1項(以下、単に「賃確法」という。)所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金、労基法114条所定の付加金の各支払を求め提訴したもの。
(2) 京都地裁は、Xは取締役とはいえ労基法上の労働者であるとして、Xの請求を一部認容した。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法37条
労働基準法114条
会社法329条
賃金の支払の確保等に関する法律6条1項
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/取締役・監査役
裁判年月日 2015年7月31日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ワ)560号
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例1128号52頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/労働者/取締役・監査役〕
(カ) 上記に述べたところを踏まえると、本件において、Xの労働者性を否定する事情はみいだし難いというほかなく、Xは、Yの実質的な指揮監督関係ないしは従属関係に服していたものといわざるを得ず、紛れもなく労基法上の労働者であったと認められるべきである。
〔雑則(民事)/付加金/付加金〕
(1) Yは、Xに対し、在職中、時間外手当を全く支払っていない。
(2) この点、Yは、その経営理念等から、Yの業務従事者の全員が取締役となり、経営に参加するという自主管理の経営理念に沿った運営をしていること、自由勤務制を基本としていること等から、時間外手当を支払わなかったと主張するものであるが、前記に述べたように、XはYの指揮監督下に服する労基法上の労働者と認めるほかないことからすると、その経営理念の当否は別として、YがXに対して時間外手当を支給しないことについては、合理的な理由は見出し難いものというべきである。
 そうすると、上記の不支給が、労基法37条に違反していることは明らかであるというべきであり、本件については、労基法114条に基づいて、Yに対し、過去2年分のXの時間外手当に係る付加金の支払を命じるのが相当である。