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ID番号 09173
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 紀北川上農協事件
争点 就業規則による賞与不支給とするスタッフ制導入の合理性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 農業協同組合であるY(被告)の職員であったX(原告)らが、Yによるスタッフ職制度の導入に伴う就業規則の変更は、労働条件を労働者に不利益に変更するものであって、労働契約法(以下「労契法」という。)9条及び10条の要件を満たすものではないから、原告らにはその効力は及ばないとして、未払の賃金および賞与の支払いを求める事案である。
参照法条 労働契約法10条
体系項目 就業規則(民事)/就業規則の一方的不利益変更/(3) 賃金・賞与
裁判年月日 2017年4月10日
裁判所名 大阪地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)4665号
裁判結果 棄却
出典 労働判例1165号5頁
労働経済判例速報2349号12頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 :〔就業規則(民事)/就業規則の一方的不利益変更/(3) 賃金・賞与〕
 Yにおいては、スタッフ職の賞与と定期昇給について、スタッフ職制度規程等において定める旨の規定を新設し、スタッフ職制度規程等においては、賞与は原則として支給しないこと、定期昇給は実施しないことをそれぞれ定めたため、従前は、Yの裁量によって賞与を支給し、あるいは定期昇給を実施することができたのに対し、スタッフ職制度の導入及び適用によって、賞与が原則的に支給されなくなり、定期昇給も実施されなくなったのであって、その程度はともかくと本件就業規則等の変更は、労働者の労働条件を不利益に変更するものである。
 変更に係る高度の必要性があるとまでは認め難いものの、その変更対象が具体的な権利性を欠く賞与や定期昇給に限られるなど変更に伴う不利益の程度が大きいとまではいえないこと、変更後の就業規則等の内容についても、不相当であるとまではいえないこと、同内容を理解している本件労働組合においても、反対の意思表示をしておらず、スタッフ職制度自体、Y内において一応の定着をみておると評価できること、同変更については一定程度経営上の必要性がうかがえること、以上の点が認められ、これらの点を総合的に勘案すると、本件就業規則等の変更は労契法10条所定の合理性を有していると認めるのが相当である。