全 情 報

ID番号 09179
事件名 地位確認請求控訴事件
いわゆる事件名 学校法人武相学園(高校)事件
争点 解雇の労基法19条違反が争われ、うつ病の業務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) Y(被告)の設置するA高等学校(以下「A高校」という。)の教諭であり水泳部の顧問であったX(原告、控訴人)をYが解雇したことが、労働基準法19条の規定に違反するとして雇用契約上の地位の確認を求めた事案である。 (2) 横浜地裁は、Xのうつ病が業務上の疾病とはいえないことを理由としてXの請求を棄却した。
参照法条 労働基準法19条
体系項目 解雇(民事)/解雇制限 (労基法19条)/(3) 解雇制限と業務上・外
裁判年月日 2017年5月17日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ネ)3661号
裁判結果 原判決取消、認容
出典 労働判例1181号54頁
審級関係 上告、上告受理申立て
評釈論文
判決理由 :〔解雇(民事)/解雇制限 (労基法19条)/(3) 解雇制限と業務上・外〕
 Xが失言問題、口止め問題、金銭問題等について合計8回の聴取調査を受けた時期はうつ病の発病時期のおおむね6か月前の間の出来事に当たる。失言や口止めに関する調査の段階でB副校長から「進退」という言葉を聞かされたXは、自らが退職に追い込まれるリスクを感じ、大きな精神的負荷を課され、金銭問題調査およびそれと同時に実行された部活動顧問業務及び授業担当の禁止処分は、生徒との触れ合いという教諭の根源的な生きがいを奪うものであり、D校長やB副校長から「厳しい処分」、「横領」という言葉を聞かされたXは、自らが退職に追い込まれるリスクを強く感じ、非常に大きな精神的負荷を課された。
 聴取調査やこれに付随する部活動禁止等の処分は、業務に内在する危険の現実化といえる。そして、その業務上負った心理的負荷の程度は大きく、平均的な教諭にとっても、軽度のうつ病を発症させるに足りるものであったといえる。
 発症前6か月間のXの月平均100時間を超える時間外労働は、Xに非常に大きな心理的負荷を課するものであり、前記聴取調査による心理的負荷を増大させた。そして、うつ病発症の有力原因となり得るような他の原因が認められない本件においては、D校長らによる聴取調査及びXの時間外労働とうつ病発症との間に相当因果関係がある。
 うつ病はYにおける業務に起因して発症したものであり、Xは、本件解雇当時、うつ病により休職中であった。そうすると、本件解雇は労働基準法19条に反し無効である。