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ID番号 09221
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 一般財団法人あんしん財団事件
争点 広域配転の違法性などが問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 認可特定保険業者である被告Yの職員である原告Xらが、YがXらに対してした平成27年4月1日付けの各配転命令(以下当該各配転命令又はその総称を「本件配転命令」という。)又は降格処分、人事考課若しくは職種を変更する旨の業務命令等が退職強要の目的で行われた違法なものであり、これらによって精神的苦痛を受けた等と主張して、Yに対し、不法行為(当該業務命令については予備的に債務不履行(安全配慮義務違反))に基づく損害賠償請求として、慰謝料等および遅延損害金の支払を求めた事案である。
参照法条 民法709条
民法710条
労働契約法3条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2018年2月26日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)32573号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1183号29頁
審級関係 控訴
評釈論文 千野博之・季刊労働法263号172~182頁
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用〕
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 X1~3について本件配転命令が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとまでいうことはできないから、本件配転命令がYの人事権を濫用した違法なものであるということはできない。
 X4ら「に対する本件配転命令は、成績が低迷している業務推進職の職員について、その環境を変えて能力の向上及び開発の機会を提供し、業務推進に注力させるという本件人事方針の目的の下で、行われたものであ」り、異動の目的には合理性があり、異動先の選択もその目的に合致しているといえるが、X4ら女性職員の広域異動および要介護の家族がいることなどを踏まえると、「個々の具体的な状況に十分に配慮し、事前にその希望するところを聴取等した上で…、本件配転命令の業務上の必要性や目的を丁寧に説明し、その理解を得るように努めるべきであったといわなければならない」(労契法第3条第3項参照)。「Yが、事前に、X4らに広域の異動の可能性を示唆しつつ、その業務の改善を指導したことや、本件配転命令の業務上の必要性や目的について丁寧に説明し、本件配転命令についての理解を得ようとしたこと等の事情も認めることができ」ず、違法である。