全 情 報

ID番号 09260
事件名 未払賃金請求事件(395号)、損害賠償請求事件(214号、330号)
いわゆる事件名 プラネットシーアールほか事件
争点 違法な時間外労働についての未払賃金請求、パワハラについての損害賠償請求などが争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 被告Y1に採用されて広告制作業務に従事し、平成26年7月16日から休職し、解雇された原告Xが、〈1〉Y1から時間外労働について未払賃金合計257万9509円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、労働基準法114条所定の付加金として110万8546円及び遅延損害金の支払を求め、〈2〉Y1との間で労働契約上の地位を有することの確認を求め、〈3〉前記休職は上司であった被告Y2のパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)及び長時間労働の強制が原因で精神疾患を発病したことによるものであり、Xは休職後も月例賃金及び賞与の請求権を失わないと主張して、休職後の月例賃金及び賞与並びに遅延損害金の支払を求め、〈4〉XはY2の前記パワハラ等により休職に追い込まれ治療を余儀なくされたものであるとして、Y2に対し、不法行為に基づく損害賠償金330万2673円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、Y1に対してはY2の使用者(民法715条1項)として、被告Y3に対してはY1の代理監督者(同条2項)として、それぞれ前記金員の連帯支払を求め、〈5〉本件訴訟係属中におけるY1のXに対する文書4通の送付がパワハラに当たり不法行為を構成するとして、Y1に対し、不法行為に基づき、慰謝料等110万円及び遅延損害金の支払を求め、〈6〉同じく本件訴訟係属中、Y1及びその親会社であるY1の両社の代表者であるY2が、Y2本人名義の文書1通、さらに及Y2びY1の連名の文書1通を送付したことが、Xに対する嫌がらせであり不法行為を構成するとして、Y2、被告会社Y4及びY1に対し、不法行為及び会社法350条に基づき、慰謝料等110万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である(〈1〉~〈3〉がA事件、〈4〉がB事件、〈5〉〈6〉がC事件)。
参照法条 会社法350条
体系項目 賃金(民事)/割増賃金/(1) 違法な時間外労働と割増賃金
雑則(民事)/附加金
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2018年12月7日
裁判所名 長崎地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)395号/平成28年(ワ)214号/平成28年(ワ)330号
裁判結果 一部認容、一部棄却、一部却下(395号)、一部認容、一部棄却(214号、330号)
出典 労働判例1195号5頁
審級関係 控訴(後、和解)
評釈論文
判決理由 〔賃金(民事)/割増賃金/(1) 違法な時間外労働と割増賃金〕
〔雑則(民事)/附加金〕
 「Y1は、前記説示のとおり、法律上の義務に属する割増賃金の支払について、あえて支払わない旨の方針で業務を行ってきた結果、前記金額にまで未払額を累積させたものといえる。これらの事情に照らせば、Y1に対しては、平成26年12月支払分以降の未払賃金と同額の付加金(労働基準法114条)の支払を命ずることが相当である」。
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 「Xは、前記のような職場の状況から、多くの作業を抱え込み、前記2に認定した長時間労働を余儀なくされていたところ、更にY2の前記のような嫌がらせ、いじめ行為を含む継続的な叱責を受けたため、強い精神的負荷を受け、その結果、適応障害を発病して休職を余儀なくされたと推認される」。
 「Y2の前記行為は、Xの人格権等を違法に侵害する不法行為(民法709条)に当たるというべきであり、Y2は、Xの損害を賠償する責任を負うというべきである」。「また、Y2の当該行為はY1の業務を行うにつきされたものであるから、Y1も、使用者責任(民法715条1項、709条)に基づき、Xの損害を賠償する責任を負うというべきである」。
 「Y2及びY1は、原告に対し、連帯してその損害を賠償する責任を負うものと解されるが、Y3が連帯して賠償責任を負うものとはいえない」。
 Xへの文書通知については「XのY2やY1に対する請求は基本的に正当なものであって、文書5、6に記載されたように一方的に非難される理由はないといえるし」、「Xが精神疾患により就労困難であると主張しており、精神状態が良好でない可能性を認識し得る状況下で、あえて直接送付されたものであり…Xに相当の混乱、精神的苦痛を与えたことが推認される」。