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ID番号 09269
事件名 未払賃金等、地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 平尾事件
争点 労働協約の効力と賃金請求権
事案概要 (1) 貨物自動車運送等を業とする被控訴人(平尾株式会社)の営業所で生コン運送自動車の運転手として勤務してきた控訴人が、被控訴人と控訴人所属の労働組合との間で締結された給与・賞与を平成25年8月から12月間20%カットすること及び当該カット分賃金のすべてを労働債権として確認することを内容とする第1労働協約の失効及びその後に締結された同様の内容の第2労働協約(給与・賞与を平成26年8月から12月間20%カット等)の無効を主張し、カットされた給与の支払等を求める事案である。なお、同内容の第3労働協約(給与・賞与を平成27年8月から12月間20%カット等)も締結されている。
(2) 原判決は、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴したものである。高裁判決は、控訴人の控訴を棄却した。
参照法条 労働組合法16条
労働基準法23条
労働基準法24条
体系項目 賃金 (民事)/賃金請求権の発生/(25) 協約の成立と賃金請求権
裁判年月日 平成29年7月14日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ネ)1731号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1208号13頁
労働経済判例速報2385号6頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 上告受理申立て
評釈論文
判決理由 〔賃金 (民事)/賃金請求権の発生/(25) 協約の成立と賃金請求権〕
(1)労組所属の組合員2名も退職したが、その際、被控訴人と労組との間で第1労働協約及び第労働2協約によってカットされた賃金債権の取扱いについての協議が行われ、同債権については、免除、放棄することが合意されたことが認められる。この事実によれば、カットされた賃金については、弁済期を定めることなく、免除ないし放棄することが労使間で合意されたことになるから、同賃金債権はすでに消滅したというべきである。なお、いったん第1労働協約及び第2労働協約において猶予された債権を、弁済期を定めることなく免除ないし放棄するという合意の効力が問題とされる余地があるが、前記の支払を猶予された賃金債権については、上記のとおり被控訴人の経営状態も相当悪化していた中で、「カット」という文言が用いられているように、その現実の支払がされる可能性は高いものではないと認識されたものと解されるから、このような処理を行う合意も許容されるものといわざるを得ない。