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ID番号 09275
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 井関松山ファクトリー事件
争点 無期契約労働者と有期労働者との間の手当差額の不合理性が問われた事案
事案概要 (1)農業用機械器具の製造及び販売等を事業目的とする被告Yとの間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して就労している従業員(有期契約労働者)である原告Xらが、Yと期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している従業員(無期契約労働者)との間に、賞与、物価手当(本件手当等)の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して、Yに対し、〈1〉当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり、原告らには無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用されることになるとして、当該就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認、〈2〉本件手当等については、主位的に、同条の効力により原告らに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として、予備的に、不法行為に基づく損害賠償請求として、実際に支給された賃金との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)判決は、物価手当については労働契約法20条に違反するとして不合理性を認めたが、賞与については同条に違反せず、不合理ではないとした。
参照法条 労働契約法20条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 平成30年4月24日
裁判所名 松山地
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)224号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 判例時報2383号88頁
労働判例1182号5頁
労働経済判例速報2346号33頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴
評釈論文 三輪晃義・季刊労働者の権利328号19~24頁2018年10月
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
(1)将来、職制である組長に就任したり、組長を補佐する立場になったりする可能性がある者として育成されるべき立場にある無期契約労働者に対してより高額な賞与を支給することで、有為な人材の獲得とその定着を図ることにも一定の合理性が認められること、原告らにも夏季及び冬季に各10万円程度の寸志が支給されていること、被告の無期契約労働者は基本的に中途採用制度により採用されており、無期契約労働者と有期契約労働者の地位にはある程度流動性があることを総合して勘案すると、一季25万円以上の差が生じている点を考慮しても、賞与における原告らと無期契約労働者の相違が不合理なものであるとまでは認められない。
(2)物価手当が年齢に応じて増大する生活費を補助する趣旨を含むことについては、当事者間に争いはなく、被告では労働者の職務内容等とは無関係に、労働者の年齢に応じて支給されている物価手当の支給条件からすれば、同手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難であり、年齢上昇に応じた生活費の増大は有期契約労働者であっても無期契約労働者であっても変わりはないから、有期契約労働者に物価手当を一切支給しないことは不合理である。