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ID番号 09286
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 社会福祉法人どろんこ会事件
争点 本採用拒否の有効性
事案概要 (1) 社会福祉法人どろんこ会(被告)により発達支援事業部長として採用された原告が本採用を拒否され解雇されたところ、同解雇は無効であると主張して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本判決確定の日に至るまでの月例賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。(請求棄却)
参照法条 労働契約法16条
体系項目 労働契約(民事)/試用期間 /本採用拒否・解雇
裁判年月日 平成31年1月11日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)7083号
裁判結果 棄却
出典 労働判例1204号62頁
審級関係 控訴(令和1年6月5日 東京高判棄却)
評釈論文 川端小織・経営法曹205号58~63頁2020年9月
判決理由 〔労働契約 / 試用期間 / 本採用拒否・解雇〕
(1) 原告・被告間で、平成28年11月1日付けで本件労働契約が締結されたものであるところ、採用内定通知及び本件労働契約において、試用期間を入社時より3か月とする旨の約定がなされていた。
(2) 原告は、その履歴書における経歴から、発達支援事業部部長として、さらには被告グループ全体の事業推進を期待される被告の幹部職員として、被告においては高額な賃金待遇の下、即戦力の管理職として中途採用された者であったものであり、職員管理を含め、被告において高いマネジメント能力を発揮することが期待されていたものである。
(3) しかしながら、原告の業務運営の手法は、少なくとも施設長らとの円滑な意思疎通が重要となるところ、複数の施設長が原告の行為についてホットライン等に相談が行うなど、発達支援事業部部長としては高圧的・威圧的で協調性を欠き、適合的でなかったと評価せざるを得ない。
 しかも、原告は、C市案件に関して、被告がリベートを取得するなどの不正を行っているなどとそのような事実が認められないことを事実確認の面談の際に述べるなどしたほか、この点に関して不正な補助金使用があったなどとして記者会見を行うなどしたものである。
(4) 結局、以上の点に照らすと、上記のように高いマネジメント能力が期待されて管理職として中途採用された原告につき、少なくとも、本件就業規則に規定するように、他の職員の業務遂行に悪影響を及ぼし、協調性を欠くなどの言動のほか、履歴書に記載された点に事実に著しく反する不適切な記載があったことが認められるところであり、本件本採用拒否による契約解消は、解約権留保の趣旨、目的に照らし、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当なものと認められる。本件本採用拒否による本件労働契約の解消は、その余の事情について判断に及ぶまでもなく、有効と認められる。