全 情 報

ID番号 09298
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 シェーンコーポレーション事件
争点 年休取得と雇止めの有効性
事案概要 (1) 外国語学校の経営をする被告において講師として1年間の有期労働契約を締結していた原告が、有給休暇と認められない欠勤等を理由として3年目の労働契約の更新を拒絶されたところ、当該雇止めは客観的合理的理由を欠き、社会通念上不相当であり、原告の雇用契約は更新されたと主張して、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、被告の責めに帰すべき事由により原告の労務遂行が不能になった(民法536条2項)と主張して、同契約に基づき、平成29年(2017年)4月から本判決確定の日までの賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)判決は、原告の請求を棄却した。
参照法条 労働基準法39条
労働契約法19条
体系項目 解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
裁判年月日 平成31年3月1日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)8047号
裁判結果 棄却
出典 判例時報2452号79頁
労働判例1213号12頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕
(1)被告の講師約400名の内約100名程度は、1、2年で退職していること、原告は雇用期間1年の契約を1度更新したのみで本件雇止めは2度目の契約更新時期であったことが認められる。そうすると、本件において、原告が講師として再任されると期待することについて、一定程度の合理性は認められるものの、その合理的期待の程度が高いということはできないから、これを踏まえて本件再任拒否の肯否について判断する。
(2)被告は、年末年始や夏休みなどに従業員講師の休暇申請が集中してしまうと授業の調整が出来なくなるため、有給休暇は20日間あるものの、うち15日間は計画的に付与することにし、内5日間のみ従業員講師の希望する時季に付与することにしていた。
(3)被告は計画的年休を前提に法定有給休暇を超える日数の有給休暇を従業員に付与しており、法定有給休暇を超えた日数は会社有給休暇であるといえる。そして、法定有給休暇と会社有給休暇はその内容が異なり、法定休暇は、労使協定による計画休暇を除き労働者の希望する時季に与えなければならず、労働者が希望する日を特定して会社に通告することにより年休が成立して使用者の承認を必要としないのに対し、会社有給休暇は、請求の時季、請求の手続等労働者の休暇取得について制限を設けてもよく、使用者の承認によって初めて休暇が成立するとしてもよいものであることを踏まえると、計画的年休とした15日間に法定有給休暇を当てることはできないが、会社有給休暇は被告の承認した日すなわち計画的年休とした日に限り取得することができ、従業員が希望する時季に取得することはできず、法定有給休暇についてのみ従業員が希望する時季に取得することができると解するのが相当である。
(4)原告は、計画的年休や定休日以外に35日間の有給休暇、すなわち法定の有給休暇を14日超えて有給休暇の申請をしていたこと、被告は、平成28年(2016年)11月以降有給休暇が残っていないため出勤を促すメールを原告に送信しており、原告は有給休暇と扱われないことを知りながら休暇の申請をしていたことが認められる。以上によれば、原告は上記期間において14日間の欠勤をしたと判断される。
(5)被告の授業内容は、被告の授業方針に必ずしも沿ったものではなく、原告の代替授業を行った他の講師や生徒から苦情が出ていたこと、授業への遅刻・欠勤や準備不足もあり、授業を受け持っていたフランチャイズ校の講師から外される事態に至っていることが認められ、勤務態度は不良であると言わざるをえない。
(6)以上によれば、原告は取得できる有給休暇を14日超えて行使した結果、理由のない欠勤を14日間しており、勤務内容についてみても被告のカリキュラムに従わないばかりか、フランチャイズ校から講師交替を求められるにいたっているという前判示に係る諸事情を総合考慮すれば、被告において、原告の講師としての雇用を継続しない旨の判断に至ったことは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であると認められる。