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ID番号 09299
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 シェーンコーポレーション事件
争点 年休取得と雇止めの有効性
事案概要 (1) 外国語学校の経営をする被控訴人において講師として1年間の有期労働契約を締結していた控訴人が、有給休暇と認められない欠勤等を理由として3年目の労働契約の更新を拒絶されたところ、当該雇止めは客観的合理的理由を欠き、社会通念上不相当であり、控訴人の雇用契約は更新されたと主張して、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、被控訴人の責めに帰すべき事由により控訴人の労務遂行が不能になった(民法536条2項)と主張して、同契約に基づき、平成29年(2017年)4月から本判決確定の日までの賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)原判決は、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。控訴審判決は、原判決を取り消し、控訴人の請求を認めた。
参照法条 労働基準法39条
労働契約法19条
体系項目 解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
裁判年月日 令和1年10月9日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成31年(ネ)1859号
裁判結果 原判決取消
出典 判例時報2452号74頁
労働判例1213号5頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 上告、上告受理申立て
評釈論文 森戸英幸・ジュリスト1540号4~5頁2020年1月
判決理由 〔解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕
(1)労働基準法39条1項及び2項により被控訴人が控訴人に与えなければならない法定年次有給休暇は、平成27年9月1日からの1年間について10日、平成28年9月1日からの1年間について11日である。そして、有給休暇は、原則として、労働者の請求する時季に与えなければならないこととされている(同条5項本文)。
 次に、被控訴人は、就業規則において、控訴人を含む講師に対し、法定年次有給休暇を超える年間20日の有給休暇を与えると定めているところ、そのうち法定年次有給休暇の日数を超える部分である会社有給休暇(平成27年9月1日からの1年間については10日、平成28年9月1日からの1年間について9日である。)については、労働基準法の規律を受けるものではないから、被控訴人がその時季を指定するものとすることが許されると考えられる。
(2)ところで、被控訴人がその就業規則において定める計画的有給休暇制度においては、法定年次有給休暇と会社有給休暇とを区別することなく、年間の有給休暇20日のうち、15日分について、被控訴人がその時季を指定することとされているところ、上記に説示したところによれば、被控訴人が時季を指定することができるのは会社有給休暇に限られ、法定年次有給休暇については、時季を指定することができない。そして、被控訴人は、法定年次有給休暇と会社有給休暇を区別することなく15日を指定しており、そのうちのどの日が会社有給休暇に関する指定であるかを特定することはできない。したがって、上記の指定は、全体として無効というほかなく、年間20日の有給休暇の全てについて、控訴人がその時季を自由に指定することができるというべきである。
 以上によれば、控訴人が有給休暇として取得した休暇について、正当な理由のない欠勤であったと認めることはできない。
(3)被控訴人は、控訴人の勤務内容が不良であるとして、種々の主張をするが、いずれも雇止めをするかどうかの判断に際して重視することを相当とするようなものとは認められない。
(4)したがって、被控訴人は、本件雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件により契約締結の申込みを承諾したものとみなされるから、控訴人は、被控訴人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び平成29年4月から本判決確定の日まで毎月15日(その日が銀行営業日でない場合は次の営業日)限り25万7800円の賃金の支払を求めることができる。