全 情 報

ID番号 09321
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ヤマダコーポレーション事件
争点 本採用拒否
事案概要 (1) 本件は、圧縮空気を動力源としたポンプを開発・製造するメーカーである被告(株式会社ヤマダコーポレーション)に経営企画室IT管理者(係長)として平成29年9月16日に採用された原告が、被告から試用期間満了により同年11月30日付で解雇されたが、解雇は無効であるとして、被告に対し雇用契約上の地位確認及び解雇時からの未払賃金の支払とともに、不当解雇等による不法行為ないし債務不履行に基づく損害の賠償を求める事案である。
(2) 判決は、本件解雇は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当というべきとして、原告の請求を棄却した。
参照法条 労働契約法16条
体系項目 労働契約 (民事)/試用期間/(2) 本採用拒否・解雇
裁判年月日 令和1年9月18日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)42659号
裁判結果 棄却
出典 労働経済判例速報2405号3頁
D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文 末啓一郎・労働経済判例速報2405号2頁2020年4月10日
判決理由 〔労働契約 (民事)/試用期間/(2) 本採用拒否・解雇〕 (1)原告には協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動等により、被告の社内関係者及び取引先等を困惑させ、軋轢を生じさせたことなどの問題点があり、被告の指導を要する状態であったと認められる。
 そして、試用期間中の解雇は、本採用後の解雇より広汎に許容されることに加え、試用期間が3か月間と設定され、時間的制約があることにも鑑みれば、比較的短期間に複数回の指導を繰り返すことを求めるのは、使用者にとって必ずしも現実的とは言い難いところ、現に、原告の上司であるI室長やE課長が、入社から2か月目面談の実施まで、原告の上記問題点を改めるべく、機会を捉えて原告に対する相応の指導をするも、それに対する原告の反応や態度等を踏まえると、上記問題点に対する原告の認識が不十分であるか、原告が指導に従う姿勢に欠ける等の理由で、改善の見込みが乏しい状況であったことが認められる。
(2)原告のITの専門家としての経歴及び被告における採用条件や職務内容、原告と他部署との関係等を考慮すると、被告において、原告について配置転換等の措置をとるのは困難であり、かつ、前述した原告の問題点は、配置転換をすることにより改善が見込まれる性質のものでもないこと、被告が主張する解雇事由は、結局のところ、原告の勤務に臨む姿勢や態度といった根本的で重大な問題を含むものであって、係長としての管理職の資質に関するものであると解されること、原告は当時試用期間中であり、被告への入社までにすでに3社に勤務しており、システムエンジニアとして約27年間の社会人経験を経ているのであって、上司からの指導を受けるなど、改善の必要性について十分認識し得たのであるから、改めて解雇の可能性を告げて警告することが必要であったともいえないことなどの事情に加え、被告の取引先との関係悪化等の事実関係からすると、深刻又は重大な結果が生じなかったとしても、原告の雇用を継続することにより、今後、被告側の経営に与える影響等も懸念せざるを得ないことなどを総合的に考慮すると、被告が、試用期間中である同年11月30日の時点において、試用期間の満了までの残り2週間の指導によっても、原告の勤務態度等について容易に改善が見込めないものであると判断し、試用期間満了時まで原告に対する指導を継続せず、原告には管理職としての資質がなく、従業員として不適当である(就業規則39条1項)として、原告の本採用拒否を決定したことをもって、相当性を欠くとまではいえない。
(3)そうすると、本件解雇は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当というべきであるから、原告と被告との間の雇用契約は本件解雇により終了したものと認められる。