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ID番号 09347
事件名 債務確認請求本訴、求償金請求反訴事件
いわゆる事件名 福山通運事件
争点 損害賠償における被用者の使用者に対する逆求償権
事案概要 (1)ア 本訴事件は、一審被告(福山通運株式会社)に雇用され、一審被告の業務として自動車を運転していた際に被害者を死亡させる交通事故を発生させ、被害者の相続人の一人に賠償金を支払った一審原告が、一審被告に対し、主位的に、上記交通事故によって生じた被害者の損害全額を被告が負担するとの合意が成立したと主張して同合意に基づき、予備的に、被用者の使用者に対するいわゆる逆求償権に基づき、一審原告が支払った(支払方法は弁済供託である。)賠償金相当額1552万2962円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
 イ 反訴事件は、上記交通事故に関し、被害者の他の相続人に対し、賠償金を支払った一審被告が、原告に対し、民法715条3項、自動車損害賠償保障法4条に基づき、求償金1300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)原判決は、一審原告の予備的請求を認め、839万2222円及びこれに対する遅延損害金を一審被告が一審原告に対し支払うよう命じた。 これに対し、一審被告は、敗訴部分を不服として控訴した。控訴審判決は、いわゆる逆求償権を認めず、原判決中本訴請求に関する一審被告敗訴部分を取り消し、一審原告の本訴請求を棄却するとともに、一審被告の反訴請求についての本件控訴も棄却した。このため、一審原告が求償金等の支払を求め上告した。
(3)最高裁判決は、逆求償権を認め、控訴審判決のうち一審原告が敗訴した本訴請求に関する部分を破棄し、差し戻した。
参照法条 民法715条3項条
体系項目 労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(22)労働者の損害賠償義務/
裁判年月日 令和2年2月28日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成30年(受)1429号
裁判結果 一部破棄、差戻し
出典 最高裁判所民事判例集74巻2号106頁
裁判所時報1742号7頁
判例時報2460号62頁
判例タイムズ1476号60頁
金融・商事判例1598号8頁
金融・商事判例1600号30頁
労働判例1224号5頁
交通事故民事裁判例集53巻1号14頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係 上告受理申立て
評釈論文 水町勇一郎・ジュリスト1543号4~5頁2020年4月
石毛和夫・銀行法務2164巻6号70頁2020年5月
田中洋・月刊法学教室477号141頁2020年6月
舟橋伸行・法律のひろば73巻7号68~72頁2020年7月
富永晃一・季刊労働法270号166~176頁2020年9月
國武英生(労働判例研究会)・法律時報92巻12号138~141頁2020年11月
河野奈月(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1551号115~118頁2020年11月
大槻健介・経営法曹206号107~115頁2020年12月
大西邦弘・法と政治〔関西学院大学〕71巻3号47~77頁2020年11月
舟橋伸行・ジュリスト1553号89~92頁2021年1月
吉村良一・民商法雑誌156巻5・6号20~36頁2021年2月
久須本かおり・愛知大学法学部法経論集226号67~95頁2021年3月
大西邦弘・私法判例リマークス〔62〕<2021〔上〕〔令和2年度判例評論〕>(法律時報別冊)34~37頁2021年2月>
佐藤康紀・速報判例解説〔27〕(法学セミナー増刊)89~92頁2020年10月
細谷越史・速報判例解説〔27〕(法学セミナー増刊)257~260頁2020年10月
大内伸哉・判例評論750号(判例時報2487)137~142頁2021年9月1日
三笘裕/監修/小川美月・ビジネス法務20巻9号73頁2020年9月
山本周平・北大法学論集72巻1号181~194頁2021年5月
判決理由 〔労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(22)労働者の損害賠償義務〕
(1)民法715条1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁、最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。
 また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁)、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。
 以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。
 5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決中、上告人の本訴請求に関する部分は破棄を免れない。そして、上告人が被上告人に対して求償することができる額について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。