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ID番号 09373
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 学校法人目白学園事件
争点 懲戒処分の有効性
事案概要 (1) 本件は、被告(学校法人目白学園)と雇用関係にある原告X1、X2が被告に対し、それぞれ、被告が原告らに対し行った出勤停止5日間の懲戒処分が無効であることの確認を求め(請求1(1)及び(2))、原告X1が被告に対し、主位的に、同懲戒処分(本件処分1)が不法行為であるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、同懲戒処分による出勤停止中の給与、賞与の一部、定期昇給がなかったことによる支払われなかった賃金等の支払を、予備的に、雇用契約に基づき、同額の賃金及び遅延損害金の支払を求め(請求2(1))、原告X2が、被告に対し、主位的に、同懲戒処分(本件処分2)が不法行為であるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、同懲戒処分による出勤停止中の給与、賞与の一部、定期昇給がなかったことによる支払われなかった賃金等の支払を、予備的に、雇用契約に基づき、同額の賃金等の支払を求め、(請求2(2))、原告らが、被告に対し、それぞれ、上記各処分が不法行為に当たるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び弁護士費用等の支払を求める(請求3)事案である。
(2) 判決は、原告X1については懲戒処分を有効と認め、原告X1の請求のいずれも棄却し、原告X2については懲戒処分を無効とし、請求2(2)の賃金請求の一部を認容し、その余は棄却した。
参照法条 労働契約法15条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/3 懲戒権の濫用
裁判年月日 令和2年7月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成31年(ワ)4329号
裁判結果 一部棄却、一部認容
出典 労働判例1248号82頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/3 懲戒権の濫用〕
(1)原告X1は、理事らに対し、侮蔑的なあだ名を付けて一方的に批判、揶揄する内容のメールを、被告内部の1名から18名に対し、約1か月の短期間に11回にわたり送信したものであり、その内容、回数等のほか、送信を受けた他の被告の職員について業務とは無関係の内容の上記各メールを作成、閲読させるなどして被告の業務に与えた影響も考慮すると、就業規則等に定める義務違反の程度を軽視することはできない。そして、原告X1が以前に同様の行為を行ったことにより口頭厳重注意を受けたことがあるにもかかわらず、再度、被告の理事等を批判、揶揄する内容の本件メールを送信したことからすると、原告X1の上記義務違反の責任は軽いものとはいい難い。
 以上に判示した諸事情を総合考慮すると、被告が原告X1を出勤停止5日間とした本件処分1は、被告の使用者としての懲戒についての裁量権の範囲を逸脱又はこれを濫用したと認めることはできないというべきである。
(2)原告X2の行為のうち、原告X1に対して被告職員の個人情報の一覧表を加工して送信することにより情報を提供した点については、当時、原告X1は、原告X2と同じく学事部内の職員であったものの、私的に企画していた送別会に便宜であるという理由で本件情報を受けたものであり、また、本件情報の保有について何ら権限もなかったのであるから、原告X2が原告X1に対して本件情報を提供したことは、職務上知り得た個人情報を漏えいし、又は自ら不当な目的で使用したものであり(個人情報保護規則3条2項)、加えて、収集した個人情報について定められた目的以外の目的への利用及びあらかじめ情報主体の同意を得ない第三者への提供(個人情報保護規則6条1項本文)にも当たるというべきであり、これらの規定に違反した(就業規則29条4号)点で懲戒事由に該当すると認められる。
 しかしながら、本件情報に含まれていた個人情報の内容は、生年月日を除けば被告内部において必ずしも秘匿性が高い情報であるとまではいい難いこと、本件情報が漏えいし、これにより被告に何らかの損害が生じたとも認められないこと、原告X2が故意に虚偽の事実を告げたとする被告の主張は採用し難いこと、原告X2は本件処分2の前に懲戒処分等を受けたことはないことなどの諸事情を総合すると、懲戒処分をすること自体の必要性は認められるものの、懲戒処分が重い方から懲戒解雇、降職、出勤停止、減給、戒告とある中において、原告X2に対する懲戒処分として、出勤停止という重い方から3番目の懲戒処分とすることは重きに失し、相当性を欠くというべきである。
 そうすると、本件処分2は、使用者である被告の裁量権の行使に基づく処分として社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱したものとして無効であるというべきである。
(3)本件処分1は有効な処分であり、被告による本件処分1が原告X1に対する不法行為に当たるとはいえない。
本件処分2は無効であるところ、その理由が、懲戒処分を行うことは認められるものの、出勤停止5日間という懲戒処分が重きに失したというものであることなどの前判示の事情を総合考慮すると、被告が本件処分2をしたことにより原告X2の権利を違法に侵害したとして不法行為が成立するということはできない。以上のとおり、原告らの被告に対する不法行為に基づく賃金相当額の損害賠償請求(主位的請求)及び慰謝料請求は、いずれも理由がない。
(4)原告X2に対する本件処分2は無効であるから、原告X2は、被告に対し、雇用契約に基づき、本件処分2の出勤停止期間に係る給与の支払、賞与の減額分の賃金、定期昇給がなかったことによる賃金差額を求めることができる。