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ID番号 09378
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 エアースタジオ事件
争点 劇団員の労働者性
事案概要 (1) 本件は、被告(株式会社エアースタジオ)の下で劇団員として活動していた原告が、法定労働時間に対する最低賃金法による賃金及び時間外労働に対する法定の割増率による割増賃金について未払があるとして、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づく賃金等及び労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求めるとともに、被告が原告を、一月に2日程度しか休日を取得できず、一日3時間程度しか睡眠時間を取得できない環境で長きにわたり労務提供させた行為及び被告が従業員をして行わせた暴言、脅迫が不法行為に該当するとして、使用者責任に基づく損害賠償請求として、慰謝料等の支払を求める事案である。
(2) 判決は、原告の労働者性については、裏方業務について労務の提供であると認め、公演への出演については労務の提供とはいえないとした上で、賃金の一部請求を認容し、その余の請求については棄却した。
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則 (民事)/労働者/ (13) 演奏楽団員・オペラ歌手・劇団員等
裁判年月日 令和元年9月4日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)21640号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 判例時報2461号62頁
労働判例1236号52頁
労働経済判例速報2403号20頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事)/労働者/ (13) 演奏楽団員・オペラ歌手・劇団員等〕
(1)劇団員が自由に参加を決定することができていたのは、演目に出演するかどうかのみであり、その他の小道具や大道具等の裏方業務については、本件劇団が決定した年間公演スケジュールに支障が生じないよう、自身の担当課(部)の業務を遂行することとされていたのであるから、裏方業務への参加に諾否の自由があり、指揮命令に関わりなく業務が行われていたとはいえない。
 被告は、月額6万円の支給について、劇団員としての活動に携わる時間にかかわらず支給するものであるから、労務対償性が認められないとも主張するが、被告の主張を前提としても、月額6万円の支給は、アルバイトを行う時間を削って劇団の業務に励む劇団員を支援する趣旨で設けられたものであること、劇団員の業務遂行状況は、副座長が随時チェックするものとされていたこと及び劇団業務の遂行状況によっては在籍への影響もあるものとされていたことからは、裏方業務を遂行しない劇団員に対しても支払われていたものとはにわかに信じがたく、劇団員が担当している音響照明や大道具業務の人員が不足する場合には、外部から雇って給料を支払っていることも併せ考えると、月額6万円の支給は、出演以外の劇団業務に相当な時間を割いている劇団員に対し、その労務に対する対価として支給されていたものというべきである。
 原告は、本件劇団の指揮命令に従って、時間的、場所的拘束を受けながら労務の提供をし、これに対して被告から一定の賃金の支払いを受けていたものと認められるから、原告は、被告に使用され、賃金を支払われる労働者(労働基準法9条)に該当すると認められる。
(2)他方、公演への出演は任意であり、諾否の自由があったことは原告も認めるとおりであるから、原告は、被告の指揮命令により公演への出演という労務を提供していたとはいえず、チケットバックとして支払われていた金銭は、役者としての集客能力に対する報酬であって、出演という労務の提供に対する対価とはいえない。
(3)原告に、未払割増賃金は発生していないから、付加金請求には理由がない。
(4)原告の、パワーハラスメント等を理由とする不法行為及び使用者責任に基づく損害賠償請求には理由がない。