全 情 報

ID番号 09385
事件名 違約金及び損害賠償請求事件
いわゆる事件名 キャバクラ運営A社従業員事件
争点 違約金、損害賠償の予約
事案概要 (1) ガールズバーやキャバクラ店を経営している原告(有限会社A)は、平成29年12月被告と雇用契約を締結した。原告は、その業務内容の中心が男女間の接待であり、従業員が私的交際を行うと担当する客が離れてしまって1日当たり3~5万円の損失が発生し、当該店舖の風評被害が生じ、当該従業員の友達も退職するなどの被害が予想されることから、全従業員に対し、私的交際の絶対禁止とそれに違反した場合の違約金200万円の支払を内容とする同意書への署名を求め、原告の従業員であった被告は、これらを納得の上で同意書に署名してこれを約していたが、被告は副店長と交際を開始したため、4項目の約束をする旨の始末書を作成させた上で、違約金の徴収を猶予した。しかし、被告が始末書の約束に違反したため、原告は、被告に対し、雇用契約の債務不履行(同意書及び始末書の違反)に基づき違約金200万円の一部100万円、不法行為に基づく損害賠償として100万円の一部40万円及びこれら合計140万円に対する遅延損害金の支払を求める事案である。
(2) 判決は、同意書は、労働基準法16条に違反しており無効であるなどとして、原告の請求を棄却した。
参照法条 労働基準法16条
体系項目 労働契約 (民事)/9 賠償予定
裁判年月日 令和2年10月19日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 令和2年(ワ)5991号
裁判結果 棄却
出典 判例タイムズ1485号185頁
労働判例1233号103頁 
審級関係 控訴(後、控訴取下)
評釈論文 柴田彩子・LIBRA21巻7・8号32~33頁2021年7月
判決理由 〔労働契約 (民事)/9 賠償予定〕
(1)同意書は、使用者である原告が被用者である被告に対して私的交際を禁止し、これに違反した場合には違約金200万円を請求し、被告はこれを支払う旨合意するものであるところ、これは、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁じた労働基準法16条に違反しており、無効である。
 また、人が交際するかどうか、誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されなければならないところ、本件同意書は、禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや、その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている点において、被用者の自由ないし意思に対する介入が著しいといえるから、公序良俗に反し、無効というべきである。
(2)違約金の定めをもって被告の私的交際を禁止した本件同意書は無効であって、被告がCと交際することは本来的に自由である。そして、被告のCとの交際について、男女間の愛情から生じたものでなく原告に対して財産的損害を与える目的で行われたといった特段の事情はうかがえないから、被告に不法行為上の違法は存しない。よって、原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。